「ダメージ」
(原題:DAMAGE)92年作品。ルイ・マル監督の作品をすべて観ているわけではないが、本作は出来の良い方だと思う。何より、愛欲に溺れている男と女が実は互いに全く違う認識を持っていること、そしてそれがもたらす取り返しの付かない災厄を容赦なく描くあたりに、作者の覚悟をひしひしと感じてしまう。...
View Article「億男」
面白くなりそうな設定なのだが、筋書きはヘンに説教じみており、ディテールの詰め方も甘い。結果として、欲求不満を抱えたまま劇場を後にしなければならなかった。企画段階から見直すべき案件だったと思われる。...
View Article「幸福の旅路」
(原題:HEROES)77年作品。ベトナム戦争を扱ったアメリカ映画としては「ディア・ハンター」(78年)あたりがその嚆矢だと思われているのかもしれないが、実はそれ以前から何本か作られていた。もっとも、マーティン・スコセッシ監督の「タクシードライバー」(76年)がそうであったように、それらは戦地の話ではなく主に帰還兵を描いていた。本作もその一つだ。...
View Article「チューリップ・フィーバー 肖像画に秘めた愛」
(原題:TULIP FEVER )殊更持ち上げたい映画ではないが、観ている間は退屈せず、よくまとまった作品だと思う。吟味された舞台セットや衣装を見るだけでも有意義だし、背景になっている経済史上の重要な出来事は実に興味深い。...
View Article「search/サーチ」
(原題:searching )アイデアには感心した。また、決して“ただの思い付き”に終わらせないため、ストーリーラインにも努力の跡がみられる。ただし、この手は基本的に一回しか使えないため(何度もやれば即マンネリだ)、次回はどういうアプローチを見せるかが、この若い監督(これがデビュー作のアニーシュ・チャガンティ)の課題だろう。...
View Article「500ページの夢の束」
(原題:PLEASE STAND BY )味わいのある佳編で、鑑賞後の印象も悪くない。特に「スター・トレック」シリーズに思い入れのある者なら、堪えられない魅力を感じるだろう。また、主演女優の奮闘も目覚ましい。...
View Article「ハモンハモン」
(原題:JAMON JAMON )92年スペイン作品。何だかよく分からない映画である。各キャラクターが勝手気ままに動き回り、当初設定されていたはずの人間関係が無効になったまま、それぞれ必然性があるとは思えないポジションに到達して終わる。一応コメディなのだろうが、笑うというより呆気にとられる感じだ。...
View Article「LBJ ケネディの意志を継いだ男」
(原題:LBJ )題材は興味深く、筋書きは正攻法で各キャストの仕事ぶりも確かだ。ロブ・ライナー監督は久々に演出に気合いが入っており、観る価値はあると思う。しかし、もっと突っ込んで描いてもらいたかったネタは他にもあり、その意味では不満を感じてしまった。...
View Article「客途秋恨」
(原題:客途秋恨)90年香港=台湾合作。興味深い映画だと思う。監督アン・ホイの自伝的作品だが、彼女自身が多様なルーツを持ち合わせており、民族や国籍などのアイデンティティにどう対峙するかという、グローバルかつセンシティヴな課題に向き合っているあたりがポイントが高い。...
View Article「ヴェノム」
(原題:VENOM )予告編やクリーチャー・デザイン等で強く印象付けられる“ホラー風味”は、ほとんど無い。それどころかコメディ・タッチで、愛嬌の良さも感じさせる。もちろん、その路線に専念して成果を上げていれば申し分ないのだが、これが万全ではない。聞けば本国での評価は芳しいものではないらしいが、それも頷ける内容だ。...
View Article「教誨師」
いまいちピンと来ない。なぜなら、明らかにディテールの積み上げが必要である題材を取り上げたにも関わらず、それが十分ではないことだ。さらに言えば、余計なケレンが多すぎる。こういうネタは、(力技の変化球がサマになる監督を除けば)正攻法の描き方こそが相応しいはずだ。...
View Article「飛ぶ夢をしばらく見ない」
90年松竹作品。デイヴィッド・フィンチャー監督の「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(2008年)に似た設定の映画だが、出来はこちらの方が幾分マシである。だが、決して優れた映画ではなく、どちらかというと凡作の部類だろう。いずれにしろ、この“若返りネタ”(?)というのは用意周到に段取りを整えないと、サマにならないということを実感した次第。...
View Article「つる 鶴」
88年東宝作品。吉永小百合の映画出演100本記念作品として上映されたが、正直、どうしてこのような企画が通ったのか分からない。出来の方も、さほど芳しいものではない。...
View Article「銃」
面白くない。ストーリー展開は説得力に欠けているし、キャラクター設定も感心しない。何より、主人公の饒舌すぎるモノローグにはタメ息が出てくる。なお、原作になった中村文則の同名小説はかなり前に読んではいるが、内容はすでに忘却の彼方だ。...
View Article「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」
(原題:YEAR OF THE DRAGON)85年作品。第6回ゴールデンラズベリー賞で最低作品賞をはじめ各部門の候補になったシャシンとして知られ、私自身も評価していないのだが、日本ではかなり話題になったことを覚えている。これはひとえに主演俳優の人気ゆえだろう。言い換えれば、これがもしもキャストが少しでも地味だったら、完全に埋もれていたと思われる。...
View Article「生きてるだけで、愛。」
メンタル面でハンデのあるキャラクター達が織り成すドラマだが、作品自体は普遍性が高く、観ていると身につまされて胸が痛くなる。決して明るい映画はないものの、キャストの奮闘も含めて高く評価したい。最近の邦画の中では上出来の部類だ。...
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