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「刑事エデン 追跡者」

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 (原題:A STRANGER AMONG US )92年作品。ストーリー展開よりも、舞台設定の方に興味を覚える。ニューヨーク市警の女刑事エミリー・エデンは、ユダヤ教ハシド派のコミュニティで起きた殺人事件を担当することになる。そこで彼女は、指導者の息子で熱血漢のアリエルと知り合い、憎からず思うようになる。だが、文化の違いは2人の間に高い壁を作る。潜入捜査を始めたエデンは、容疑者としてヤクザのバルデサリ兄弟を逮捕するが、誤認に終わる。やがて彼女自身が犯人のターゲットになっていく。



 本作を観てまず思い出すのが、ピーター・ウェアー監督の「刑事ジョン・ブック 目撃者」(85年)である。あの映画では主人公がアーミッシュと呼ばれるカトリック保守派のコミュニティに入り込むが、その設定はこの映画と似ており、邦題もそのあたりを考慮して付けられたのだと思う。もっとも、筋書きはあまり褒められたものではない。さんざん引っ張った挙げ句、暗示も伏線も提示されないまま唐突に登場する犯人には目が点になるばかり。

 しかしながら、劇中で紹介されるユダヤ人コミュニティの有様は面白い。男女とも服装は規定されており、生活様式は禁欲的で、アリエルはテレビも映画も見たことはなく、部外者から金品は絶対に受け取らない。そして彼は、ユダヤ教司祭の娘と一度も会ったこともないまま結婚しようとしている。このような場所がニューヨークの真ん中に存在すること自体、驚きだ。

 ただ、映画はそんな日本人とは縁のない世界を実に平易に紹介しているあたりは好感が持てる。エデンのキャラクター設定もよく考えられており、元警官である父親との断絶や、それでも自分の意思で刑事の道を選んだパワフルなヒロイン像が上手く表現されている(それにしても“エデン”という名前は意味深だ)。演じるメラニー・グリフィスは敢闘賞ものだ。

 エリック・サルやミア・サーラ、トレイシー・ポランといった脇のキャストも良い。シドニー・ルメット監督作品としては物足りない出来だが、観る価値はひとまずありそうだ。

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