「ぶれない男」
(英題:A MAN OF INTEGRITY)アジアフォーカス福岡国際映画祭2018出品作品。全編にわたり、肌にまとわり付くような不快感と息苦しさを覚える映画だ。断っておくが、これは褒めているのである。これだけマイナスの要素が充満していながら、真っ当に娯楽映画として成り立たせているという、作者の力量には感服するしかない。...
View Article「泣き虫しょったんの奇跡」
面白く観た。監督の豊田利晃はかつてプロ棋士を目指したこともあり、阪本順治監督の「王手」(91年)の脚本も書いている。それだけに、題材に対する理解度や臨場感は並々ならぬものがあり、単に事実をなぞっただけの実録物にはなっていない。主要キャストの頑張りも印象的だ。...
View Article「ア・フュー・グッドメン」
(原題:A FEW GOODMEN )92年作品。良く出来た法廷劇だ。しかも、一般の裁判所ではなく軍事法廷で物語が展開するというのも、題材として目新しい。さらに、昨今マスコミなどで取り沙汰されている各界のパワハラやモラハラの事案をも想起させ、現時点で観ても得るものが大きいと思う。...
View Article「判決、ふたつの希望」
(原題:THE INSULT)観ていて引き込まれる。レバノンの複雑な民族問題や政治問題を背景にしていながら、エンタテインメント性を前面に出した良質の法廷劇に仕上がっている。緻密なプロットの積み上げと粘り強い演出により、幕切れのカタルシスも大きい。まさしくこれはプロの仕事である。...
View Article「クリフハンガー」
(原題:CLIFFHANGER )93年作品。冒頭の、登場人物の女性が絶壁の間にかけられたケーブルに宙づりになった挙げ句、力尽きて谷底へ落ちていくシーンが凄い。絶壁に取り付けられた垂直下降式のエレベーター・カメラの効果も相まって、文字通り“真下に落ちる姿”を観客の視線になりかわって至近距離で見せていく。...
View Article「ザ・プレデター」
(原題:THE PREDATOR)かなり雑な作りだ。レベルとしてはローランド・エメリッヒやマイケル・ベイの諸作と同程度の大味な内容。しかも、あまり予算が掛けられていないので、観た印象は実にショボい。劇場公開する必要は無く、ビデオリリースで十分とも思える出来だ。...
View Article「ヤンクス」
(原題:YANKS )80年作品。肌触りの良い映画だ。戦時中を舞台にして、いわゆる反戦テイストも盛り込まれているのだが、描写自体は静かである。声高な展開を望む向きには受け容れられないだろうが、これはこれで評価出来よう。...
View Article「きみの鳥はうたえる」
本作で一番興味深いキャラクターは、柄本佑演じる“僕”の、バイト先での年上の同僚である森口だ。いわゆる“ケツの穴の小さい男”で、甲斐性も無いくせにヘンな正義感だけは旺盛。底の浅い“正論(らしきもの)”を堂々と披露するかと思えば、辛く当たられたことを根に持って狼藉に及ぶ。反面、依頼心が強くて上役には阿諛追従する。程度の差こそあれ、こういう下衆な性分を持ち合わせていると“自覚”している者(私も含む...
View Article「太陽と月に背いて」
(原題:Total Eclipse )95年イギリス作品。19世紀のフランスを代表する天才詩人アルチュール・ランボーの新人時代を、その“恋人”のポール・ヴェルレーヌとの関係を通して描く。監督は「オリヴィエ・オリヴィエ」(92年)や「秘密の花園」(93年)などのポーランドの女流アニエシカ・ホラント。...
View Article「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」
とても感銘を受けた。このような設定によくある“頑張れば何とかなるよ!”といったポジティヴ過ぎる方法論は完全に封印され、実に苦々しい達観(ある意味では正論)を全面的に展開させるという、作者のその覚悟が観る側にストレートに迫ってくる。少しでもコミュニケーションに苦労している多くの者にとっては、必見の映画だと言えよう。...
View Article「クイズ・ショウ」
(原題:Quiz Show )94年作品。1950年代後半。テレビジョンの発展期に起きた一大スキャンダルを描く実録ドラマ。ロバート・レッドフォードの監督第4作目で、アカデミー賞ノミネートなど、各方面で高い評価を受けた話題作である。...
View Article「1987、ある闘いの真実」
(原題:1987)最後まで有無をも言わせず観客を引きずり回す、かなりの力作である。たとえ韓国に対して良い印象を持っていない者が接したとしても、このパワーには圧倒されてしまうだろう。またダークな実録物であると共に、ラブストーリーやサスペンス劇の要素も取り入れ、娯楽作品としても立派に通用していることも嬉しい。...
View Article「ホッファ」
(原題:HOFFA )92年作品。個性派俳優のダニー・デヴィートは、何本か演出も手掛けている。その中で私は本作しか観ていないが、監督としても有能であることが強く印象付けられる出来だ。取り上げた題材も興味深い。...
View Article「散り椿」
木村大作の前回の監督作「春を背負って」(2014年)よりは質の面でいくらかマシだが、やはり評価出来るようなレベルには達していない。改めて感じるのだが、この監督は登場人物の内面が描けない。前々作「劔岳 点の記」(2009年)はビジネスライクな(?)話だったのであまり気にならなかったが、本作のような各キャラクターの心理を掘り下げる必要のある題材には、この監督に適性があるとは思えない。...
View Article「菊とギロチン」
いまひとつピンと来ない。ひょっとしたら特定のイデオロギーを持ち合わせている人は大絶賛するのかもしれないが、まずは映画を一歩も二歩も“引いて”観てしまう当方にとっては、まとまりの無さばかりが目についてしまう。加えて3時間を超える上映時間は、疲労感を覚えるのには十分過ぎた。...
View Article「五福星」
(原題:奇諜妙計五福星)83年作品。十代の頃から、観た映画についてノートに題名と概要そして短評を書いていた(まあ、文章力は今も当時からさほど進歩していないのは内心忸怩たる思いだが ^^;)。先日、実家の押し入れを整理していたら、80年代に使っていたノートが出てきて、しばし感慨にふけっていたが(笑)、パラパラとめくっていてふと目に付いたのがこの映画だ。...
View Article「止められるか、俺たちを」
思い入れたっぷりに撮られているようだが、私は共感出来なかった。これはいわゆる“世代の違い”に起因するのかもしれない。監督の白石和彌は74年生まれ。団塊ジュニアと呼ばれる年代だが、彼らの親である団塊の世代は、まあいろいろと毀誉褒貶のある(どちらかといえば“毀”と“貶”が多い)人たちだった。特に、新左翼に対するシンパシーについてはしばしば取り沙汰される。...
View Article「顔のない天使」
(原題:A MAN WITHOUT A FACE)93年作品。メル・ギブソンの監督デビュー作だが、非凡な演出力はこの頃から片鱗を見せている。設定は平易で、誰が観ても良さが分かるヒューマン・ドラマ。さらに、過去にタッグを組んだピーター・ウィアー監督の影響も感じられるあたりが興味深い。...
View Article「日日是好日」
説明的なセリフの多さは、通常マイナス評価に繋がるものだが、本作に限ってはそうではない。これは素材の奥深さをセリフがフォローしているという状況が現出しているためで、言葉が先行して映画を引っ張ろうとしているのではないのである。...
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