(原題:VENOM )予告編やクリーチャー・デザイン等で強く印象付けられる“ホラー風味”は、ほとんど無い。それどころかコメディ・タッチで、愛嬌の良さも感じさせる。もちろん、その路線に専念して成果を上げていれば申し分ないのだが、これが万全ではない。聞けば本国での評価は芳しいものではないらしいが、それも頷ける内容だ。
若き大富豪ドレイクが率いるライフ財団の打ち上げた宇宙探査機が、地球に帰還する際に墜落。財団は乗せられていた複数の地球外生命体を回収してサンフランシスコの本部に持ち帰るが、一体だけがその場を抜け出す。突撃取材で知られるジャーナリストのエディ・ブロックは、怪しげな実験を行っているとの噂のあるライフ財団へ赴く。だが、潜入した研究所で彼は被験者と接触。それにより“シンビオート”と呼ばれるエイリアンに寄生されてしまう。
この生命体はヴェノムと名乗り、エディと一体化。ヴェノムを取り戻そうとする財団の破壊工作員たちと、エディ&ヴェノムは激しいバトルを繰り広げる。一方、探索機の不時着時に解き放たれた“シンビオート”の親玉はドレイクと合体し、エイリアンを大量に地球に呼び寄せるため、財団のロケットを乗っ取ろうとする。
「スパイダーマン」シリーズに登場する悪役を主人公にしたスピンオフ作品だが、このヴェノムの造型はかなりのインパクトがある。見るからに凶暴そうでグロテスク。当然、派手なスプラッタ場面が連続するものと思わせるが、実はそうでもない。それどころかテッドとの掛け合いは面白く、一種のバディ・ムービーのような興趣を呼び込む。
しかしながら、脚本の詰めは甘い。ヴェノムがどうしてテディと意気投合するのか分からないし、そもそもライフ財団がどういう地位を占めているか不明である。“シンビオート”に憑り付かれて死んでしまう者とそうでない者が存在するが、その区分けは不明瞭。さらに、エイリアンの一体は理由も分からず途中で活動を停止する始末。エンドクレジットの途中に挿入されるシークエンスは意味が分からず、最後のスパイダーマンのCGアニメは明らかに不要だ。
それでも、監督のルーベン・フライシャーはアクション場面に関しては健闘している。特に、サンフランシスコ市街地でのカーチェイスは「ブリット」や「ダーティハリー」といった当地を舞台にした過去の映画を思い起こさせる。主演のトム・ハーディは頑張っているが、相手役のミシェル・ウィリアムズは服装が若作りで、観ていて戸惑ってしまった(笑)。なお、続編が作られるかどうかは、現時点では分からないとか。