「ヘルドッグス」
原田眞人監督とジャニーズ系を含むアイドル界隈との相性の悪さを、改めて確認した一作。ならば最初から観るなと言われそうだが、(原作は読んではいないものの)深町秋生の小説群はさほど嫌いではないので、あえてチェックして次第。そして結局は観たことを後悔しているのだから世話は無い(苦笑)。いずれにしろ、鑑賞作品を選定する際の事前の検討は必要である。...
View Article「田舎の日曜日」
(原題:Un dimanche a la campagne )84年作品。昨年(2021年)世を去ったフランスの監督ベルトラン・タヴェルニエの代表作で、第37回カンヌ国際映画祭での監督賞をはじめ、数多くのアワードを獲得している。内容も実に含蓄があり、鑑賞後の満足度はかなり高い。フランス映画の神髄を味わえる逸品だ。...
View Article「白い手」
90年作品。この頃話題になった日本映画に篠田正浩監督の「少年時代」があるが、同じく子供を主人公にした神山征二郎監督による本作も、また味のある一編だ。とはいえ、両者のテイストはかなり違う。篠田作品の時代設定は終戦前夜、対してこの映画は昭和30年代の初頭というから、共に監督が作中の少年だった時分であり、両作品の差異はそのまま作者の世代によるものだろう。...
View Article「こちらあみ子」
容赦の無い描写の連続で、実に観ていて“痛い”映画である。同じ子供を主人公にした作品でも、先日観た「サバカン SABAKAN」のような偽善的なシャシンとは格が違う。子供なりの“生き辛さ”が前面にクローズアップされ、私をはじめとする大人の観客がとうの昔に忘れたはずの屈託が、生々しく提示される。好き嫌いは分かれるかもしれないが、見応えのある力作と言える。...
View Article「渇きと偽り」
(原題:THE DRY )これは珍しいオーストラリア製のサスペンス劇だが、思いのほか出来が良い。何より舞台設定が秀逸だ。アメリカともヨーロッパとも違う、題名通り茫洋として乾ききった大地がどこまでも広がる。そして、登場人物たちの心情も潤いを失っている。この背景ならば、何が起こってもおかしくない。少々強引な展開も、不自然にならない。...
View Article「3つの鍵」
(原題:TRE PIANI )面白い部分もあるのだが、全体的にはピンと来ない。有り体に言えば、目的と手法がマッチしているようには思えないのだ。深く描きたいのならば登場人物と劇中経過時間を削るべきだし、群像劇に徹するには段取りが万全ではない。監督ナンニ・モレッティは今回初めて原作ものを手掛けたのだが、その点も影響しているのかもしれない。...
View Article「マイ・ブロークン・マリコ」
主人公の荒ぶる内面を手加減なく描き、観る者を圧倒する。ただし、欠点はある。内容を勘案すれば、85分という上映時間は短い。あとエピソードを一つか二つ追加して、各キャラクターをもっと肉付けして欲しかった。しかしながら、それでも本作のメッセージの強さは揺るがない。少しでも浮世の理不尽さを味わった者にとっては、切ない感慨を覚えることだろう。...
View Article「千夜、一夜」
個人的には評価しない。理由は、タッチが重すぎるからだ。もちろんヘヴィな題材を扱っている関係上、決してライトな雰囲気にはならないことは承知している。しかし、本作は重さのための重さというか、深刻に描くこと自体が目的化しているような傾向があるのだ。映画はそんな暗い“空気”の創出ばかりに気を取られるあまり、各登場人物の内面描写は不十分になっている。これではとても共感できない。...
View Article「ボーダー」
(原題:The Border)81年作品。この映画の一番の見どころは、あのジャック・ニコルソン扮する主人公が善玉という設定で、しかもヒーロー的な働きまでしてしまうという御膳立てだ。表向きは良い奴だが実は・・・・という、ありそうな仕掛けも無い(笑)。徹頭徹尾、社会悪に立ち向かう正義漢として扱われる。それだけで、観る価値があるかもしれない。...
View Article「向田理髪店」
いわゆる“ご当地映画”であり、多大な期待を寄せるのは筋違いであることは分かる。ストーリーはもちろんキャラクター設定も予定調和であり、大仰なメッセージ性やドラマティックな展開とは無縁である。ならば全然面白くないのかというと、そうでもない。たまにはこういうマッタリとした雰囲気に身を置くのも悪くは無いと思わせる。ローカル色豊かな点も捨てがたい。...
View Article「夜明けまでバス停で」
社会問題を真っ向から描く映画になるはずが、途中から“妙な方向”に舵が切られ、観終われば釈然としない気分が残る。考えれば監督の高橋伴明は団塊世代の影響を大きく受けていることは「光の雨」(2001年)などでも明らか。そういうスタンスでこの題材を扱って良いとは思えない。また、主人公の造形も現実感を欠く。...
View Article「佐々木、イン、マイマイン」
2020年作品。良い映画だと思う。リアルタイムで劇場鑑賞していたならば、確実にその年のベストテンに入れていたことだろう。誰しも若い頃に体験した掛け替えのない出会いと、それが後の人生に影響を与えていく様子を普遍的かつ内省的に描き、しみじみとした感慨を呼び込む。各キャストの熱演も光る、青春映画の佳編だ。...
View Article「愛してる!」
日活ロマンポルノ50周年を記念し、現役の監督3人がそれぞれ作品を手がけた“ROMAN PORNO NOW”の第二弾だが、第一弾の松居大悟監督「手」同様、予想通り気勢の上がらない出来だ。あまり期待できないのならば観るなと言われそうだが、前にも書いたように、そこは若い頃に成人映画にけっこう接した身としては見届けたいというのが本音である。...
View Article