(原題:Continental Divide)81年作品。この邦題は、当時「1941」(79年)や「ブルース・ブラザーズ」(80年)を経て人気絶頂にあったジョン・ベルーシの主演作であることを強調するもので、作品の内容とはまったく関係ない。それどころか、彼自身のキャラクターから予想されるようなナンセンスなお笑い劇とはまるで異なる、ロマンティック・コメディなのだ。ベルーシもそれらしく“二の線”に徹しており、彼の多才ぶりが印象付けられる。
主人公アーニー・スーチャックはシカゴの新聞社に勤める敏腕記者だ。彼は市政界の裏に暗躍する反社会的分子を糾弾する記事を連日発表し、好評を得ていた。ところが敵対勢力から暴行を受けるという事件が勃発。心配した編集長は、アーニーにロッキー山脈の山奥への長期出張を命じ、街から避難させる。取材の対象は、絶滅寸前のアメリカ白頭鷲の生態を調査している女性鳥類学者ネル・ポーターだ。ところが彼女は大のマスコミ嫌い。素気ない態度を取られて気落ちするアーニーだったが、偶然が重なって山小屋に数週間2人だけの生活を強いられる。
住む世界が異なる男女が、最初は互いに敬遠していたが次第に仲良くなるという、典型的なスクリューボール・コメディの体裁を取る。だから筋書きは予想通りで、重要ポイントは周辺の御膳立てなのだが、けっこう上手くいっていると思う。何より、雄大なロッキー山脈の風景が魅力的。加えて、ヒロインがフィールドワーク中心の学者であることから、動物の描写もけっこう出てくる。舞台が一般ピープルにとっての非日常であり、これならば予定調和のハナシを披露しても違和感が無い。
マイケル・アブテッドの演出はまあ普通のレベルだが、脚本を名手ローレンス・カスダンが手掛けているせいか、終盤近くの処理などは実に気が利いている。ベルーシの演技は達者で、それからも多彩な役柄を期待されたが、若くして世を去ってしまったのは残念でならない。
ヒロイン役のブレア・ブラウンをはじめ、アレン・ゴーウィッツにカーリン・グリン、バル・アベリーなど他のキャストも堅実だ。ジョン・ベイリーのカメラによる明媚な山岳地帯の描写は印象に残る。マイケル・スモールの音楽も悪くない。