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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ボーダー」

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 (原題:The Border)81年作品。この映画の一番の見どころは、あのジャック・ニコルソン扮する主人公が善玉という設定で、しかもヒーロー的な働きまでしてしまうという御膳立てだ。表向きは良い奴だが実は・・・・という、ありそうな仕掛けも無い(笑)。徹頭徹尾、社会悪に立ち向かう正義漢として扱われる。それだけで、観る価値があるかもしれない。

 LA警察に勤めるチャーリーは、犯罪が蔓延る大都市の有様に嫌気がさし、国立公園の管理官として異動することを望んでいた。しかし、知らぬ間に妻のマーシーがテキサス州エル・パソに新居を購入してしまう。仕方なく彼は妻の友人サバンナの夫のキャットと一緒に、メキシコ国境の警備隊として勤務するようになる。



 ある日、彼は若い女マリアが赤ん坊と弟を連れてメキシコから不法入国しようとしているのを見つける。当初は違法行為を咎めていたチャーリーだが、危険を冒して国境を越える者たちが大勢いる現実を知り、マリアに同情するようになる。そんな中、国境警備隊員の不良分子が人身売買に加担していることを知った彼は、敢然と悪に立ち向かう。

 本作が撮られてから40年以上が経つが、メキシコからの不法入国問題は一向に解決しない。中には“国境に壁を作ってやる!”と宣言して大統領にまでなった者もいたようだが、この件は単に力尽くで押さえ込もうとしても無理なのだ。経済格差をはじめ、一筋縄ではいかない要因が横たわっている。この映画もそのあたりに言及しているが、あくまで主眼は前述の通りニコルソン御大演じるチャーリーの奮闘だ。

 彼は決して手練れのファイターではなく、普通の男である。事がそう上手く運ぶわけではない。それでも徒手空拳で立ち向かう姿に、観ていて感情移入してしまう。ベテランのトニー・リチャードソンの演出は、この後に撮った「ホテル・ニューハンプシャー」(84年)ほどの切れ味は無いが、最後までドラマは弛緩することはない。

 ハーヴェイ・カイテルも出てきて、彼本来の(?)役柄を的確に演じている。ヴァレリー・ペリンやウォーレン・オーツ等の脇の面子も良いし、マリアに扮するエルピディア・カリロの可憐さも光る。テキサスの荒野をとらえたリック・ウェイトによるカメラワークは非凡だが、それよりもライ・クーダーの音楽が良い。「パリ、テキサス」や「クロスロード」もそうだが、こういう舞台設定の映画では彼の音楽は抜群の効果を発揮する。

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