主人公の荒ぶる内面を手加減なく描き、観る者を圧倒する。ただし、欠点はある。内容を勘案すれば、85分という上映時間は短い。あとエピソードを一つか二つ追加して、各キャラクターをもっと肉付けして欲しかった。しかしながら、それでも本作のメッセージの強さは揺るがない。少しでも浮世の理不尽さを味わった者にとっては、切ない感慨を覚えることだろう。
若いOLのシイノトモヨは、勤め先のブラック体質に辟易しつつも漫然とした日々を送っていた。ある日、彼女は幼なじみのイカガワマリコが自ら命を絶ったことをテレビのニュースで知る。マリコは子供の頃から実の父親にひどい虐待を受けており、最後まで幸薄い人生を歩むしかなかった。シイノは浮かばれないマリコの魂を供養するため、彼女の遺骨を強奪。そして生前マリコが行きたいと言っていた海沿いの町を目指して、遺骨と共に旅に出る。平庫ワカによる同名コミックの映画化だ。
まず、マリコの悲惨な生い立ちには言葉も出ない。若くして世を去ってしまうが、言い訳もせずに絶えず自虐的な微笑みを浮かべていたのには、胸が痛む。実を言えば、シイノも生き辛さをずっと感じている。周囲とどう折り合いを付けて良いのか全く分からず、突っ張ってばかりいる。心を通じ合わせられるのはマリコだけだ。いわば“二人で一人”の存在だったのだが、一方がいなくなったことで、シイノは自らの人生の“総括”を迫られる。
それは見て見ぬ振りをしていた心の傷に改めて向き合い、ギリギリまで追い詰められることを意味する。たどり着いた東北の町は、風光明媚ながら(シイノの心情を象徴するかのように)終日どんよりと曇った空模様だ。また、時折現れるマリコの幻影により自らの不甲斐なさを再確認するという映像的仕掛けは、パセティックな緊張感を喚起させる。また、終盤に展開する思わぬ活劇シーンは、本作が内側に落ち込むだけの暗いシャシンではなく、映画的興趣を十分引き出していることにも感心する。
脚本にも参画しているタナダユキの演出は堅牢で、シイノが旅先で出会う人々を掘り下げるシークエンスが足りないとは思うが、秀逸なラストまで緩みを見せない。主演の永野芽郁には正直驚いた。ヒロインのやさぐれた風体と言動とは裏腹の、泣けてくるような純情を過不足なく表現し、スクリーンから目が離せない。本年度の主演女優賞の有力候補だ。マリコに扮する奈緒にとってはこういう役柄は自家薬籠中のものだろうが、やはりその求心力には目を見張る。窪田正孝に尾美としのり、吉田羊といった他の面子も万全だ。
若いOLのシイノトモヨは、勤め先のブラック体質に辟易しつつも漫然とした日々を送っていた。ある日、彼女は幼なじみのイカガワマリコが自ら命を絶ったことをテレビのニュースで知る。マリコは子供の頃から実の父親にひどい虐待を受けており、最後まで幸薄い人生を歩むしかなかった。シイノは浮かばれないマリコの魂を供養するため、彼女の遺骨を強奪。そして生前マリコが行きたいと言っていた海沿いの町を目指して、遺骨と共に旅に出る。平庫ワカによる同名コミックの映画化だ。
まず、マリコの悲惨な生い立ちには言葉も出ない。若くして世を去ってしまうが、言い訳もせずに絶えず自虐的な微笑みを浮かべていたのには、胸が痛む。実を言えば、シイノも生き辛さをずっと感じている。周囲とどう折り合いを付けて良いのか全く分からず、突っ張ってばかりいる。心を通じ合わせられるのはマリコだけだ。いわば“二人で一人”の存在だったのだが、一方がいなくなったことで、シイノは自らの人生の“総括”を迫られる。
それは見て見ぬ振りをしていた心の傷に改めて向き合い、ギリギリまで追い詰められることを意味する。たどり着いた東北の町は、風光明媚ながら(シイノの心情を象徴するかのように)終日どんよりと曇った空模様だ。また、時折現れるマリコの幻影により自らの不甲斐なさを再確認するという映像的仕掛けは、パセティックな緊張感を喚起させる。また、終盤に展開する思わぬ活劇シーンは、本作が内側に落ち込むだけの暗いシャシンではなく、映画的興趣を十分引き出していることにも感心する。
脚本にも参画しているタナダユキの演出は堅牢で、シイノが旅先で出会う人々を掘り下げるシークエンスが足りないとは思うが、秀逸なラストまで緩みを見せない。主演の永野芽郁には正直驚いた。ヒロインのやさぐれた風体と言動とは裏腹の、泣けてくるような純情を過不足なく表現し、スクリーンから目が離せない。本年度の主演女優賞の有力候補だ。マリコに扮する奈緒にとってはこういう役柄は自家薬籠中のものだろうが、やはりその求心力には目を見張る。窪田正孝に尾美としのり、吉田羊といった他の面子も万全だ。