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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ヘルドッグス」

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 原田眞人監督とジャニーズ系を含むアイドル界隈との相性の悪さを、改めて確認した一作。ならば最初から観るなと言われそうだが、(原作は読んではいないものの)深町秋生の小説群はさほど嫌いではないので、あえてチェックして次第。そして結局は観たことを後悔しているのだから世話は無い(苦笑)。いずれにしろ、鑑賞作品を選定する際の事前の検討は必要である。

 凶悪事件を阻止することが出来なかった警官の兼高昭吾は職を辞し、その後は事件に関わった者たちへ復讐するために生きてきた。数年後、彼は警察組織からその獰猛さを見込まれ、関東最大の暴力団への潜入捜査を強要される。目的はボスが持つ極秘ファイルを奪うことで、そのためには兼高との相性が良好だとされる凶暴な若いヤクザ室岡秀喜と仲良くなり、組織内で成り上がってボスに近付く必要がある。兼高は警察の期待通り室岡と共に名をあげるが、思わぬ落とし穴が待っていた。



 とにかく、登場人物全てが早口で勝手にまくし立て、何を言っているのか分からないのには閉口した。これが原田監督の代表作である「金融腐蝕列島 呪縛」(99年)のようにドキュメンタリー・タッチの実録風ドラマならば臨場感が醸し出されて効果的なのかもしれないが、こういう純然たるフィクションでそれをやられると、違和感を覚えるだけでなくストーリーが追えなくなる。

 もっとも、その筋書き自体も弱体気味のようで、警察を辞めた人間を囮捜査要員に仕立て上げるという設定からして無理がある。いつ正体がバレるかもしれないというサスペンスも希薄で、兼高が疑われる切っ掛けになったエピソードも、完全に底抜け状態だ。主演は岡田准一だが、必要以上に彼を目立たせるためか、余計なモチーフを盛り込みすぎ(例:思わせぶりなタトゥー等)。

 かと思えば、身長が高くはない岡田の外見をカバーする気配もなく、特にバディ役の坂口健太郎と無造作に並べられて小柄な面が強調されるなど、撮り方もヘタだ。その坂口も、いかにも善人キャラの彼に狂的なヤクザ役を振ったのはどこのどいつだと、文句の一つも言いたくなる。肝心のアクションシーンも切れ味不足。完全に「ザ・ファブル」シリーズの後塵を拝している。

 ボス役のMIYAVIも貫禄不足で、松岡茉優に北村一輝、大竹しのぶ、金田哲、酒向芳、赤間麻里子といった他の面子も精彩が無い。それにしても原田監督と岡田のタッグはこれで3回目だ。作品の完成度には結び付いていないようなのに、どうしてこの組み合わせが成り立つのだろうか。まあそれが“業界の事情”ってやつだろう。

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