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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「手」

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 当初の予想通り、面白くなかった。日活ロマンポルノ50周年を記念し、現役の監督3人がそれぞれ作品を手がけた“ROMAN PORNO NOW”の第一弾だが、以前の45周年を記念した“日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト”がそうであったように、現時点でのロマンポルノの在り方を煮詰めないままゴーサインが出たような案配だ。ならば観なければ良かったのだが、若い頃に(限られた期間ながら)けっこう成人映画に接した身としては、あえてチェックする必要があると思った次第である。

 若いOLのさわ子はの趣味は、中年男性の写真を撮ってコレクションすることだ。今まで付き合ってきた男もオッサンばかり。しかし父親とはうまくコミュニケーションが取れず、一緒にいても打ち解けることは無い。そんな中、同世代の仕事仲間の森が彼女にモーションをかけてくる。山崎ナオコーラによる同名小説(後に「お父さん大好き」に改題)の映画化。



 要するにヒロインはファザコンってことだろう。父親との仲がギクシャクしているから、代わりにそのへんの中年野郎たちに興味を覚えていただけの話。語るに落ちるような設定で、何の面白みも無い。で、思いがけなく若い男と交際するようになり、ほんの少しモノの見方が変わったような気がしたと、つまりはそういうことだ。

 もちろん、筋立てが単純でも語り口が上手ければ文句は無いのだが、松居大悟の演出は平板で盛り上がりに欠ける。たとえば前半、さわ子が妹のリカと2人で、それまでに撮ったオッサンの写真の整理をしている場面があるが、これは主人公の屈折した心情とイレギュラーな家族関係を表現するのに絶好のシークエンスでありながら、スクリーンから感じられるのは弛緩した空気のみだ。

 また、森とのアバンチュールも表面的で退屈。言葉や表情でそれらしく取り繕っても、情念やエロティシズムは表現できない。さらに致命的なことに、さわ子に扮する福永朱梨には魅力が感じられない。セリフは棒読みでリアクションも鈍く、おまけにプロポーションは良くない。リカ役の大渕夏子の方がまだマシだ。

 相手役の金子大地も手持無沙汰の様子だし、津田寛治や田村健太郎、金田明夫など他のキャストもパッとしない。また、本作の上映時間は約1時間40分だ。かつてのロマンポルノの多くが1時間強で簡潔に仕上げられていたことを思えば、違和感を覚えずにはいられない。

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