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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「渇きと偽り」

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 (原題:THE DRY )これは珍しいオーストラリア製のサスペンス劇だが、思いのほか出来が良い。何より舞台設定が秀逸だ。アメリカともヨーロッパとも違う、題名通り茫洋として乾ききった大地がどこまでも広がる。そして、登場人物たちの心情も潤いを失っている。この背景ならば、何が起こってもおかしくない。少々強引な展開も、不自然にならない。

 メルボルンの連邦捜査官であるアーロン・フォークは、旧友ルークの葬儀に出席するため20年ぶりに故郷の田舎町に帰ってくる。ルークは妻子を殺した後に自殺したらしい。だが、地元の警察には納得していない者がおり、若い頃のルークを知るアーロンも事件の真相を突き止めようとする。



 実は彼らは学生時代に女友達の死に直面しており、一応は事故と片付けられたものの、アーロンは釈然としない気持ちをずっと持ち続けていた。そしてルークの一件は、奇しくも20年前の事件の裏に隠されていた意外な事実をも引き出すことになる。ジェイン・ハーパーによるベストセラー小説の映画化だ。

 彼の土地では長らく雨が降らず、異常乾燥注意報が発出している。広い農場は作物が育たず、今シーズンの不作は決定的だ。斯様な荒涼とした風景の中にあっては、人々は取り繕ってはいられない。殺伐とした自身の本音をさらけ出すだけだ。70年代にはいわゆる白豪主義は建前として無くなり、本作の舞台になる地方にも有色人種の住民がいる。だが差別は厳然としてあり、それが本作のような御膳立ての中では遠慮会釈無く出てくる。しかも、その差別は家族間・友人間でも顕在化し、それが事件の背景に一枚噛んでいるあたりが玄妙だ。

 ロバート・コノリーの演出は強靱で、主人公が都合良く証拠を集めていくという幾分謎な流れも勢いで乗り切ってしまう。そして、終盤に明らかになる2つの事件の真犯人も十分に意外性に富んでいる。主演のエリック・バナ以外は、ジュネビーブ・オライリーにキーア・オドネル、ジョン・ポルソン、ジョー・クローチェックなど馴染みの無いキャストだが、皆良い味を出している。

 カラカラに干上がったオーストラリアの大地を即物的に捉えたステファン・ダスキオによるカメラワークも見事だ。音楽担当はピーター・レイバーンなる人物で、的確な仕事ぶり。だが、それよりも事件のキーパーソンに扮するベベ・ベッテンコートが歌うテーマソングが強烈な印象を残す。ともあれ上映劇場は限られるが、要チェックの作品だと思う。

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