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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「白い手」

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 90年作品。この頃話題になった日本映画に篠田正浩監督の「少年時代」があるが、同じく子供を主人公にした神山征二郎監督による本作も、また味のある一編だ。とはいえ、両者のテイストはかなり違う。篠田作品の時代設定は終戦前夜、対してこの映画は昭和30年代の初頭というから、共に監督が作中の少年だった時分であり、両作品の差異はそのまま作者の世代によるものだろう。

 小学5年生のマサルは、千葉県の小さな港町に母親と二人で住んでいる。ある日、彼のクラスに東京から転校生のキヨタカがやって来る。ある“致命的な弱点”を持つキヨタカは早速イジメの対象になるが、マサルは彼の母から友だちになってくれと涙ながらに頼まれ、仕方なく仲良くすることにした。2人の通学経路には瀟洒な洋館があり、マサルたちは二階の窓から出ている白い手が気になって仕方がない。実はそこには病気で寝たきりの女の子がいて、彼らは強い関心を寄せる。椎名誠による同名小説の映画化だ。

 まあ、いつの世もそうなのだが、子供の世界というのはドライで容赦ないものなのだ。皆好き勝手に振る舞うし、転校生はイジメられるものと相場が決まっている。だが、本作の主人公たちを取り巻く環境は、かなり楽天的だ。しかし、本作の登場人物たちは篠田監督の「少年時代」のような明日をも知れぬ切迫した世界には生きていない。

 昭和30年代前半の日本は戦後の混乱期も一段落し、これからは良くなることはあっても悪くなることは無いと誰しも信じていたのだろう。マサルたちの前に少々の逆境が立ちはだかっても、余裕で乗り越えてしまう。

 もちろん、この映画のライトな雰囲気は時代背景だけのせいだけではない。マサルの母親が父親の弟と通じてしまっても、担任の女性教師が名うてのプレイボーイと懇ろになっても、少しも雰囲気が生臭くならない。少しばかりの無茶をやらかしても、それは人間の本性だと見切ってしまう。そんな屈託の無さをとことんポジティヴに描いているし、それに不自然にならないだけの演出の力がある。

 一応は主役扱いの南野陽子は演技が上手いとは言えないし、哀川翔や石黒賢もこの頃は青臭い。桜田淳子が出ているのも隔世の感がある。ただその分小川真由美や前田吟、佐藤オリエといった手練れの人材が頑張っている。飯村雅彦のカメラによる映像は美しく、特に冒頭とラストに映し出される壮大な桜並木は圧巻だ。

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