「マーダー・ミステリー」
(原題:MURDER MYSTERY)2019年6月よりNetflixで配信されたコメディ・ミステリー。本国の評判は良くないらしいが、個人的には大いに楽しめた。コロナ禍によって遠出もできず、漫然と家にいることが多かった時期に、こういう何も考えずに向き合えるお笑い編を観られたことは絶好の気分転換になり、実にありがたい。...
View Article「エル・スール」
(原題:EL SUR)83年作品。監督はスペインのビクトル・エリセだが、彼はそれまで1963年に映画監督の資格を取ってから「決闘」(69年)でオムニバス形式一話を担当したほかには、傑作「ミツバチのささやき」(73年)しか撮っていない。さらに本作以後には「マルメロの陽光」(92年)があるのみだ。...
View Article「スターダスト・メモリー」
(原題:Stardust Memories )80年作品。明らかにフェデリコ・フェリーニ監督の「8 1/2」(1963年)を意識した作品ながら、製作当時は先鋭的だったかもしれないが今観ると鼻白むばかりのあの映画より面白い。しかもフェリーニ作品が(こういうネタとしては場違いな)2時間を超える長尺だったのに対し、このウディ・アレンの映画が1時間半にまとめられているのも好印象だ。...
View Article「在りし日の歌」
(原題:地久天長)時制をバラバラにして配置する手法は、あまり好きではない。効果的なポイントで数回実施するのならば許されると思うが、映画の半分以上をそのやり方で押し切っているというのは、愉快ならざる気分になる。3時間を超える長尺だが、時制を正常に展開させればあと30分は削れると思った。とはいえ、キャストは健闘しており、映像も悪くないので観て損したという気にはならない。...
View Article「ローカル・ヒーロー 夢に生きた男」
(原題:LOCAL HERO)83年イギリス作品。一見社会派映画のように見えて、実は本来私が苦手としている(笑)ファンタジーものだ。しかし、大仰な仕掛けと御都合主義的なプロットが横溢する一般のファンター映画(←このあたり、筆者の偏見が全面展開している...
View Article「COLD WAR あの歌、2つの心」
(原題:COLD WAR)2018年作品。世評は高いが、封切り時には見逃してしまった映画である。今回なぜか再上映されたので、劇場に足を運んでみた。感想だが、あまり芳しいものではない。何より、登場人物の内面が描けていない。だから、主人公たちの言動には説得力が無い。88分という短い尺だが、必要以上に長く感じられた。...
View Article「ジャンヌ・モローの思春期」
(原題:L'Adolescente )79年作品。12歳の少女の、成長を等身大に描いた映画だが、そこはフランス映画、しかも監督がジャンヌ・モロー、その“成長”の度合は呆れるほど大きい。しかも、そんなにドラマティックな出来事があるわけではなく、夏休みを淡々と過ごすだけでヒロインの内面を(作為的ではなく)著しく変化させるという筋書きを違和感なく展開させているのは、さすがと言うしかない。...
View Article「Fukushima 50」
この映画が封切られたのは2020年3月6日だが、私が劇場で観たのは6月上旬である。その間にコロナ禍による緊急事態宣言が発令されて映画館も軒並み休業。5月下旬に宣言が解除され、ようやく映画館も営業を開始したのだが、そうした後に同じく緊急事態宣言というフレーズが飛び交う本作に接すると、そのダメさ加減に脱力するばかりだ。...
View Article「古井戸」
(原題:老井)87年作品。地味だが、良い映画だと思う。今や世界第二位のGDPを誇るまでになった中国だが、ほんの約30年前には地方にはこれほどまでに開けていない土地が広がっていたことに驚かされる(ひょっとすると現在も同様なのかもしれない)。そこに生きる人々の哀歓を掬い上げると共に、その現実に何とか対峙しようとする主人公の姿を活写し、鑑賞後の満足感は決して小さくはない。...
View Articleカイタックスクエアガーデンがオープン。
去る2020年6月11日に、福岡市中央区警固に新しく建設された複合施設“カイタックスクエアガーデン”がオープンした。本来は4月下旬に営業を開始する予定だったのだが、件のコロナ禍により延期され、このたびやっと開店に漕ぎ着けたものである。地上4階建て、敷地面積約8千平方メートルの規模だ。...
View Article「ANNA アナ」
(原題:ANNA)リュック・ベッソン監督によるアクション物としては、やっぱり「ニキータ」(90年)や「レオン」(94年)といった全盛期の作品よりは幾分落ちる。ならばダメな映画かというと、決してそうではない。旧作群のインパクトには及ばないということを早々に見切った上で、筋書きの面白さで勝負しようとしている。これは正解だと思う。...
View Article「サン・スーシの女」
(原題:La Passante du Sans-Souci )82年作品。若くして世を去ったロミー・シュナイダーの遺作というだけでも感慨深いが、内容も悲痛で観ていて胸に迫るものがある。また演出も脚本も巧みで、主演女優の魅力を存分に発揮させている点は評価して良いし、見応えがある。...
View Article「ルース・エドガー」
(原題:LUCE)端的に言って、これは“何かあると思わせて、実は何もない映画”である。いや、正確には“何かある”のだとは思う。しかし、それが映画的興趣を喚起するほどに十分描き切れていないだけだ。聞けば本国での評価は上々らしいが、理解できない。あるいは彼の地ではリベラルっぽいネタを扱えば、斯様な生ぬるい出来でも評価されるということだろうか。...
View Article「スペンサー・コンフィデンシャル」
(原題:SPENSER CONFIDENTIAL)2020年3月よりNetflixで配信されたアクション・コメディ。取り立てて評価するようなシャシンではないのだが、良い感じでユルく、気軽に楽しめることは確かだ。ピーター・バーグ監督作品としても「バトルシップ」(2012年)や「バーニング・オーシャン」(2016年)みたいなハードな大作ではなく、小規模で肩の力が抜けたようなタッチで好印象だ。...
View Article「髪結いの亭主」
(原題:LE MARI DE LA COIFFEUSE )90年フランス作品。パトリス・ルコント監督作品としては89年に撮られた「仕立て屋の恋」にクォリティは一歩譲るが、知名度ではこちらの方が上である。日本ではタイトルと同名のことわざがあるので題名の訴求力が高いというのも確かだが、変化球を駆使したピュアな恋物語としての存在価値は大いにある。...
View Article「悪の偶像」
(英題:IDOL)脚本がダメ。そもそも、この設定はいくらでも話を面白くすることが出来る。たとえ経験の浅い脚本家がストーリーを手掛けたとしても、何とかサマになる筋書きを考え付くはずだ。しかし本作は、そんな発展性のあるアウトラインを打ち消すかのような迷走ぶりを示し、まるで“典型的な失敗例”を展観しているかのようだ。せっかく良い役者を揃えているのに、もったいない話である。...
View Article「鑓の権三」
86年作品。篠田正浩監督のこの頃の代表作である。原作は近松門左衛門の世話浄瑠璃「鑓の権三重帷子」だが、単なる古典の映画化ではなく、見事に現代にも通じるテイストを獲得している。キャストの仕事ぶりや映像も申し分ない。その年のキネマ旬報ベスト・テンでは、6位にランクインしている。...
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