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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「コロンバス」

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 (原題:COLUMBUS)狙うところは分かる。映像も魅力的。ただし薄味でインパクトに欠ける。聞けば2017年度のサンダンス映画祭をはじめ23の映画祭にノミネートされ、8冠を獲得したとのこと。確かにあちらの評論家にとってウケが良さそうな清澄な雰囲気はあるのだが、もう少しエンタテインメント方向に振れるか、あるいは徹底して高踏的でアーティスティックな路線で迫るか、いずれかにしないと印象が薄くなるのは仕方が無い。

 インディアナ州コロンバス在住の高名な建築学者が突然倒れてしまう。息子である韓国系アメリカ人のジンはソウルから駆けつけるが、父の容態が変わらないためこの街にしばらく滞在することになる。彼は地元の図書館で働いている若い女ケイシーと知り合う。彼女は高校は出たものの、薬物依存症の母親の面倒を見るためコロンバスから離れられない。

 実はジンは父親とは上手くいっていなかった。そのため若い頃にすぐに家を出たのだが、父が倒れた後に初めてそばにいることになったという成り行きに皮肉なものを感じる。一方ケイシーは、講演で知り合った建築学の教授から遠方の大学に行くことを奨められていた。

 脚本も手掛けた新人監督のコゴナダは、小津安二郎の多くの映画で脚本を手がけた野田高悟にちなんでそう名乗っているらしい。なるほど、フィックスなカメラで背景を切り取ってゆく撮影スタイルは小津作品に通じるものがある。しかし、洗練の極みで登場人物達の孤独を掬い上げていた小津の映画と本作とは、内容は似ても似つかない。この映画はよくある家族の確執を、平易に取り上げているだけだ。それ自体は別にライトな題材ではないが、筋書きが凡庸に過ぎる。

 ジンやケイシー、そして他のキャラクターにも感情移入はしにくく、その表面的な作劇を(この地の名物である)モダンな建造物群の描写で糊塗しているように思える。その建築物自体は見事でそれを捉えた映像も捨てがたいのだが、物語との強い繋がりは最後まで見出すことが出来なかった。主演のジョン・チョーとヘイリー・ルー・リチャードソンの演技は悪くないが、困ったことに小津映画に出てくる俳優たちの存在感にはとても及ばない。

 なお、コロンバスという街を本作で初めて知ったが、映画で描かれている通りここは建築デザインで有名であるらしい。特にエリエル・サーリネンによるファースト・クリスティアン・チャーチや、エーロ・サーリネンによるアーウィン・ユニオン銀行の存在感には目を見張る。アメリカの隠れた観光地の一つだろう。

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