(原題:SPENSER CONFIDENTIAL)2020年3月よりNetflixで配信されたアクション・コメディ。取り立てて評価するようなシャシンではないのだが、良い感じでユルく、気軽に楽しめることは確かだ。ピーター・バーグ監督作品としても「バトルシップ」(2012年)や「バーニング・オーシャン」(2016年)みたいなハードな大作ではなく、小規模で肩の力が抜けたようなタッチで好印象だ。
ボストン市警のスペンサー巡査は上司ボイランに暴行をはたらき逮捕される。警察をクビになって5年の刑期を終えて出所した彼は、格闘技のジムを経営する友人ヘンリーのもとへ身を寄せるが、ガサツな大男のホークとルームメイトとして同居するハメになり閉口する。そんなある日、ボイランが何者かに殺されるという事件が発生。警察はボイランの相棒テレンスによる犯行だと断定し、テレンスは程なく自殺してしまう。釈然としないものを感じたスペンサーは、ホークやヘンリーと一緒に調査を開始。やがて、警察上層部を巻き込む腐敗の構図が浮かび上がってくる。
マーク・ウォールバーグ扮する主人公の造型が上手くいっている。事件そのものは陰惨で悪質なのだが、スペンサーは人を殺さないし、やたら銃をぶっ放したりもしない。腕っ節の強さだけで敵をねじ伏せる。ウォールバーグらしい愛嬌の良さも好印象だ。ウィンストン・デューク演じるホークはさらに憎めないキャラクターで、特に、意地悪をされた相手の車にアホな落書きをして一人悦に入る場面など、まるで頭の中が小学生である。
アラン・アーキン扮するヘンリーに至っては、老人らしいボケたネタを披露して周囲を煙に巻く。こんな奴らが徒手空拳で戦いを挑んできては、さすがの悪の組織も相手にペースを奪われ、ついには自滅に近い形で崩壊するしか無いのだ(笑)。続編の製作を匂わせる幕切れも悪くない。
P・バーグの演出はいい案配の脱力系で、活劇場面もオフビートながらノリで見せてしまう。イライザ・シュレシンガーやマイケル・ガストン、コリーン・キャンプ(←若い頃は美人でセクシーだったが、今はすっかり太ったオバちゃんだ ^^;)といった脇の面子も良い。
それにしても、事件の背景にはカジノ建設に伴う莫大な利権の源流があり、ジャーナリストが“健全なカジノなんか無い。あんなものは不正の温床だ”と言い放つ場面は印象的。我が国の政治家にも聞かせたいセリフだ。なお、バックに流れる音楽がエアロスミスやボストンなどの“ご当地バンド”のナンバー中心だったのには笑った。