「ルディ・レイ・ムーア」
(原題:DOLEMITE IS MY NAME )2019年10月よりNetflixで配信されたコメディ作品。何といっても主演のエディ・マーフィの“復活”が嬉しい。彼は「ドリームガールズ」(2006年)以降あまり目立った仕事は無かったが、久々に手応えのある役を引き寄せたようだ。映画の出来自体も満足すべきもので、鑑賞後の印象は上々である。...
View Article村田沙耶香「コンビニ人間」
第155回芥川龍之介賞受賞作で、とても話題になり好セールスを記録した本だが、私もやっと読んでみた。なるほど、かなり面白い。主人公の造型がユニークであるばかりではなく、そのキャラクター設定の“切り口”が卓越している。また個人と社会との関係性、および両者の間に介在する“越えられない壁”の描出に非凡なものを感じる。読後感は良い。...
View Article「麻薬王」
(英題:THE DRUG KING )2018年作品で、2019年2月よりNetflixで配信された韓国映画。題材は興味深く、キャストも大熱演なのだが、話自体は捻りが無く、どこかで観たようなモチーフも目立つ。もっと脚本を練り直し、良い意味でハッタリを効かせるのが上手い監督を起用すれば、けっこう盛り上がったのではないだろうか。...
View Article「オオカミ少女と黒王子」
2016年作品。普段ならば完全に私の守備範囲外のシャシンなのだが(笑)、キャスティングが興味深いので、テレビ画面での鑑賞ながら今回チェックしてみた。結果、この手の壁ドン映画にありがちであろうグダグダの展開にならず、意外にも最後まで観ていられたことに我ながら驚いた。中身がベタでも出ている面子が良好ならば、そこそこの出来にはなるのだと思った次第である。...
View Article「アナイアレイション 全滅領域」
(原題:ANNIHILATION)2018年2月よりNetflixで配信されたSFホラー。正直言って、大して面白くない。似たような設定の作品は過去にあったし、構成および筋書きにも納得いかない部分が多い。ジェフ・ヴァンダミアによる原作は三部作の長編だということだが(本作は第一部の映画化)、この映画の出来を見る限り、残りが映像化される可能性はさほど高くないと思う。...
View Article「不能犯」
2018年作品。若年層向けのホラー作品を多数手掛けている白石晃士監督の作品を初めて観たわけだが、なるほど決して重くならずにテンポ良く話を進め、後味サッパリと仕上げるという、ある種“職人気質”みたいな持ち味で登板回数が多いのも頷けた。出来自体はとても真っ向から批評するようなレベルではないが、これはこれで割り切って観れば良いのではないかと思う。...
View Article「鉛の時代」
(原題:Die Bleierne Zeit )81年西ドイツ作品。題名通り、暗く重々しいタッチの映画だが、力強い内容で惹き付けられてしまう。戦争の後遺症から抜け出せず、先の見えない70年代までのドイツの状況を活写しながら、次の時代に託すメッセージをも感じさせる。第38回ヴェネツィア国際映画祭にて大賞を獲得しているが、それも納得だ。...
View Article「タイラー・レイク 命の奪還」
(原題:EXTRACTION)2020年4月よりNetflixで配信。かなり楽しめるバイオレンス・アクション巨編で、どうしてこれがネット配信のみなのか理解しがたい。映画館のスクリーンで対峙したかったシャシンだ。「アベンジャーズ」シリーズでお馴染みのクリス・ヘムズワースとしても、当たり役の一つになることは必至だろう。...
View Article「シャフト」
(原題:SHAFT )2019年6月よりNetflixで配信。2000年製作の同名映画の続編で、時制もキッチリとその分経過させているところは良い。出てくる面子も申し分ない。しかしながら、ギャグ方面に振りすぎた分、幾分締まりの無い出来になってしまったのは残念だ。もちろん笑わせるのは結構だが、ディテクティブストーリーらしいキレの良さも強調して欲しかった。...
View Article「トリプル・フロンティア」
(原題:TRIPLE FRONTIER )2019年3月よりNetflixで配信されたクライムアクション。製作にキャスリン・ビグローが関与しているので期待出来るかと思っていたが、中身はさほどでもない。有り体に言えば、盛り上がらないまま終わってしまう。ただロケ地の風景は魅力的なので、そこだけに着目すればある程度は満足出来るかもしれない。...
View Article「マイ・インターン」
(原題:THE INTERN)2015年作品。とても評判の良いコメディ映画のようだが、個人的には全く受け付けなかった。ストーリーもキャラクターもリアリティが無く、笑えるシーンは見当たらない。演出はモタモタしていて覇気が感じられず、中盤付近から観ていて眠くなってしまった。作り手自身が物語の要点を見定めることが出来ず、微温的に流してしまったという印象だ。...
View Article「アメリカン・ファクトリー」
(原題:AMERICAN FACTORY)2019年8月よりNetflixで配信。第92回米アカデミー長編ドキュメンタリー賞の受賞作である。これは面白い。取り上げられた題材はまさに現在進行形で、しかも語り口はスマートでユーモラス。鼻につくようなインテリ臭さも奇を衒った作劇も無く、いま世界で何が起こっているのかを平易で誰にでも分かるように提示してくれる。必見の映画と言って良い。...
View Article「汗」
内田吐夢監督による1929年製作のサイレント映画。島耕二扮する大金持ちのボンボンが、ひょんなことからルンペンの身分に転落(?)。日雇い人夫として、今までやったことのなかった“労働”に励むうちに、勤労の価値と素敵な彼女を得ることになるという、当時流行っていた“傾向映画”の一本。...
View Article「ザ・ランドロマット パナマ文書流出」
(原題:THE LAUNDROMAT)2019年10月よりNetflixで配信。本国では賛否両論の評価を受けているらしいが、それも頷ける内容だ。奇を衒ったライト感覚の作劇は、重大なテーマをサラリと見せる効用はあるが、観る者によっては悪ふざけが過ぎるという印象を持つだろう。さらに、キャストが場違いなほど豪華なのも悩ましい。要するに、受け取り方が難しいシャシンである。...
View Article「21世紀の資本」
(原題:CAPITAL IN THE TWENTY-FIRST CENTURY )興味の尽きないドキュメンタリー映画だ。もっとも、本作の主張すべてに賛同出来るわけではない。不満な点もある。しかし、問題を要領よくまとめた手際の良さや、何より“経済学の文献の映画化”という新鮮なコンセプトは十分評価に値すると思う。...
View Article「パーマネント・バケーション」
(原題:Permanent Vacation)80年作品。ジム・ジャームッシュ監督のデビュー作で、彼がニューヨーク大学の大学院映画学科の卒業制作として撮った16ミリ作品である。次作の「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(84年)の成功により日本公開され、当時は何かと二作目との対比で語られるケースが目立ったように思うが、本作単体としても独特の魅力を放っている。...
View Article「プリズン・サークル」
観る者の内面を確実に揺さぶっていく、優れたドキュメンタリー映画だ。舞台になっているのは、島根県浜田市にある島根あさひ社会復帰促進センター。ここは受刑者同士の徹底した対話により犯罪の原因を探り更生を促すという、TC(回復共同体)と呼ばれるプログラムを導入している日本で唯一の刑務所である。取材許可に6年をかけ、2年間にわたって刑務所の中での撮影を敢行した野心作だ。...
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