「遠い声、静かな暮らし」
(原題:Distant Voices, Still Lives )88年イギリス作品。しっかりと作られた佳編である。単なる家族ドラマの枠を超え、描く対象は幅広く、掘り下げは深い。監督のテレンス・デイヴィスはこれが長編処女作で、新人にもっとも権威のあるロカルノ国際映画祭での88年度グランプリ受賞作品である。...
View Article「ばるぼら」
クリストファー・ドイルによるカメラワークと橋本一子の音楽を除くと、まるでダメな映画である。とにかく、設定および筋書きがなっておらず、演出も本当に弱体気味だ。どのような意図で作ろうと思ったのか、まるで分からない。脚本の第一稿を提示された時点で、プロデューサーは即刻取り止めるべき企画であったことは間違いないだろう。...
View Article「ザッツ・ダンシング!」
(原題:That's Dancing)84年作品。歴代の映画に登場したダンス・シーンの傑作場面を厳選し、編集したアンソロジーだ。この手の映画でまず思い出されるのは、74年の第一作から3本作られた「ザッツ・エンタテインメント」シリーズである。本作は一見その“二番煎じ”だと思われるが、実はかなり違う。新しい切り口が用意されていて、訴求力が高い。その意味では、観る価値は大いにある。...
View Article「タイトル、拒絶」
決してウェルメイドな作品ではないが、観る者によってはかなり心に“刺さる”シャシンである。この映画に出てくる者たちは、大半がロクでもない。社会のメインストリームから外れている。しかし、彼らの苦悩と捨て鉢な感情は、少しでも日々の暮らしに対して違和感を抱えている人間にとっては、決して他人事ではない。スパイスの利いた佳編というべき作品だ。...
View Article「テロルンとルンルン」
上映時間が約50分という小品ながら、訴求力は高い。脚本も演出も適切で、各キャストのパフォーマンスは申し分ない。そして何より、我々が直面している問題の一つに鋭く切り込んでいるあたりは見上げたものである。軽量級ラブコメみたいなタイトルに相応しくない(笑)、硬派の映画だ。...
View Article「マーティン・エデン」
(原題:MARTIN EDEN )キャストの仕事ぶりは良い。文芸大作の雰囲気も備わっている。しかしながら、内容はピンと来ない。脚本が精査されておらず、後半の展開には整合性を欠く。また、何を描きたいのか、物語の重要ポイントが定まっていない印象を受けた。アメリカの作家の小説をイタリアに置き換えて映画化している点も影響しているのかもしれない。...
View Article「パピチャ 未来へのランウェイ」
(原題:PAPICHA )これは厳しい映画だ。第72回カンヌ国際映画祭における“ある視点部門”に出品されて高く評価されるものの、本国のアルジェリアでは上映が許されていない。この世界には、いまだに自己主張や自由な表現が許されない地域があるのだ。この実状の容赦ない告発に留まらず、逆境にたくましく立ち向かってゆく者たちの勇気を活写し、見応えのある作品に仕上がっている。...
View Article「シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!」
(原題:EDMOND)これは面白い。芸術に携わる者たちの矜持と、成果物としての演劇の素晴らしさを十分に描き出し、最後まで飽きさせない。それでいて歴史物としての風格があり、優れたコメディでもある。セザール賞では衣裳デザイン賞と美術賞の候補になっているが、作品賞や監督賞を獲得してもおかしくないほどの出来栄えだ。...
View Article「記憶の技法」
映画の“外観”とヘヴィな内容がマッチしていない。また、話自体に説得力を欠く。キャラクターの掘り下げも浅い。福岡市が主な舞台になっているのであまり文句は言いたくないのだが、もっと上手く作って欲しかったというのが本音だ。撮影から公開まで2年半もかかったのは“作品の出来も関係していたのでは”と思いたくもなる。...
View Article「燃ゆる女の肖像」
(原題:PORTRAIT DE LA JEUNE FILLE EN FEU )世評はとても高いが、個人的には少しも面白いとは思えなかった。とにかく、この映画は何か描いているようでいて、その実何も描かれていないのだ。あるのは、小綺麗な画面と思わせぶりな舞台設定、求心力に欠ける演出、そして起伏の無いストーリーだけである。とにかく、観ている間は退屈至極で、眠気との戦いに終始する始末だ。...
View Article最近購入したCD(その39)。
今回は若手女性シンガーソングライター三題。まず紹介するのが、米カリフォルニア州パサデナ出身のフィービー・ブリジャーズ(94年生まれ)のセカンド・アルバム「パニッシャー」。評判になったデビューアルバムの「ストレンジャー・イン・ジ・アルプス」(2017年リリース)は聴いていないが、この第二作の内容だけでも彼女の実力が十分にうかがわれる。...
View Article「水上のフライト」
典型的なスポ根もののルーティンが採用されており、展開も予想通りだ。しかし、この手の映画はそれで良いと思う。ヘンに捻った展開にしようとすると、よほど上手く作らないとドラマが破綻してしまう。また本作では題材が目新しく、紹介される事実もとても興味深い。キャストの健闘も併せて、鑑賞後の印象は上々だ。...
View Article「夏、至るころ」
青春映画の佳作だと思うが、特筆すべきは本作が極端に年若い監督のデビュー作である点だ。はっきり言って、ベテラン監督の手による作品でも、これより劣る映画はいくらでもある。しかも作風は正攻法で、新人にありがちな気負ったケレンはほとんど見られない。これならば、今後機会さえあればさまざまな題材をこなせそうである。...
View Article「天外者(てんがらもん)」
2020年7月に惜しくも急逝した三浦春馬の存在感が存分に印象付けられる一作。彼の持つカリスマ性と、観る者を惹き付ける演技力を見ていると、我々は何という逸材を失ってしまったのかという、残念な気持ちで一杯になる。映画自体は(悪くはないものの)取り立てて評価出来るものではないが、彼の主演作としての最後の勇姿を拝めるという意味では、存在価値はかなり高い。...
View Article「ストップ・メイキング・センス」
(原題:Stop Making Sense )84年作品。ジョナサン・デミ監督といえば「羊たちの沈黙」(90年)や「フィラデルフィア」(93年)などで知られるが、個人的にはこの映画が最良作であると思う。何より、音楽ドキュメンタリーの分野において新機軸を打ち出したという意味で、本作の価値はかなり高い。音楽好きは要チェックだ。...
View Article当てもなく選んでしまった2020年映画ベストテン。
すでに惰性になった感はあるが、年末恒例の2020年の個人的な映画ベストテンを発表したいと思う(^^;)。 日本映画の部 第一位 なぜ君は総理大臣になれないのか 第二位 本気のしるし 第三位 風の電話 第四位 はりぼて 第五位 his 第六位 37セカンズ 第七位 彼女は夢で踊る 第八位 プリズン・サークル 第九位 のぼる小寺さん 第十位 三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実 外国映画の部...
View Article「ネクスト・ドリーム ふたりで叶える夢」
(原題:THE HIGH NOTE )ストーリー自体よりも、音楽業界における“常識”めいた裏事情が紹介されているのが興味深い。明け透けに語られるその事実には呆れるしかないが、これが真相だと断定出来るだけの説得力があるのだからやり切れない。それはまた、送り手である芸能界だけではなく、聴き手である消費者の姿勢も問われるものだろう。...
View Article「エグゼクティブ・デシジョン」
(原題:Executive Decision)96年作品。お手軽なアクション編なのだが、見逃せないネタが仕込まれていて嫌いになれないシャシンである(笑)。航空パニック・アクションとしては「パッセンジャー57」(92年)や「ユナイテッド93」(2006年)ほどではないが、後期の「エアポート」シリーズなどよりは出来は良い。...
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