今回は若手女性シンガーソングライター三題。まず紹介するのが、米カリフォルニア州パサデナ出身のフィービー・ブリジャーズ(94年生まれ)のセカンド・アルバム「パニッシャー」。評判になったデビューアルバムの「ストレンジャー・イン・ジ・アルプス」(2017年リリース)は聴いていないが、この第二作の内容だけでも彼女の実力が十分にうかがわれる。
ブリジャーズの音楽は一聴すればよくあるウエストコースト系(?)フォーク・ロックのように思えるが、サウンドの端々にエッジが効いており、ほの暗い印象を受ける。ただし決してダークな展開にはならず、乾いたユーモアも感じられる。どこかジョニ・ミッチェルを思い起こさせるが、歌声は清澄で押し付けがましくなく、いつまでも聴いていたい気にさせる。
またアレンジは精妙で、ギターの弾き語りだけではなくシンセやストリングスなども織り交ぜて曲ごとにバラエティを持たせている。歌詞の内容はおおむね内省的だが、日本に行った際の印象をネタにした“Kyoto”というナンバーもあるのは御愛嬌だ。なお、第63回グラミー賞で4部門にノミネートされており、イギリスの先鋭的バンドThe 1975とコラボするなど、今後の活躍が期待される逸材である。
ノルウェーのベルゲン出身のオーロラ(96年生まれ)の日本デビュー・アルバム「インフェクションズ・オブ・ア・ディファレント・カインド・オブ・ヒューマン」は、2018年と2019年に発表されたミニ・アルバムに新トラックを通過して1枚に仕上げたもので、収録時間は80分に達する。しかし、中身はし少しも弛緩することなく、密度が濃い。なお、オーロラは芸名ではなく、本名はオーロラ・アクスネスだ。
彼女のサウンドはびっくりするほどエンヤに似ている。また、ビョークやフローレンス・アンド・ザ・マシーンに通じるものも感じる。だが、エンヤよりロック色が強く、ビョークなどとは違って“濁り”や屈折した部分があまり見られない。あくまでも透明で清涼なサウンドストームに聴き手を巻き込んでゆく。また、けっこうハードな歌詞を扱っても、アプローチはストレートでシニカルな部分が無い。
エンヤと同じくエフェクトを効かせた多重録音をメインとしながらも、ボーナストラックではアコースティックバージョンでの“素”の歌声も聴かせる。2019年のディズニー映画「アナと雪の女王2」(私は未見)に参加。本人のプロフィールや経歴は面白く、ケイティ・ペリーやアンダーワールド、ショーン・メンデスといった有名どころからも一目置かれる、興味が尽きない北欧の異能だ。
フィリピンのイロイロ市出身で幼少時にイギリスに渡り、現在はロンドンを中心に活動するビーバドゥービーことビートリス・クリスティ・ラウス(2000年生まれ)のデビュー・アルバム「フェイク・イット・フラワーズ」は、コアなロックファンの間では話題になっている好盤だ。何より、この若さでグランジの真髄を受け継いだような陰影のあるサウンドを披露しているのが嬉しい。
彼女はスマッシング・パンプキンズやソニック・ユース、エリオット・スミスなどから影響を受けたらしく、楽曲もそのテイストを踏襲している部分が大きいのだが、この年代の等身大の内面を吐露したような歌詞と何の衒いも無いストイックな歌声が聴く者を惹き付ける。プロデューサーに元ザ・ヴァクシーンズのピート・ロバートソンを迎え、若手のポップ・ミュージシャンにありがちな打ち込み多用のライトな展開を廃し、硬派のギター・サウンドで押し切っている。
先のブリット・アワードではライジング・スター賞にノミネートされ、NMEアワーズではレーダー賞を受賞。他にも各アワードの新人賞を獲得している。すでに大ブレイクしているビリー・アイリッシュと肩を並べるのも時間の問題と思われるような、いわゆるZ世代を代表する注目株と言えるだろう。
ブリジャーズの音楽は一聴すればよくあるウエストコースト系(?)フォーク・ロックのように思えるが、サウンドの端々にエッジが効いており、ほの暗い印象を受ける。ただし決してダークな展開にはならず、乾いたユーモアも感じられる。どこかジョニ・ミッチェルを思い起こさせるが、歌声は清澄で押し付けがましくなく、いつまでも聴いていたい気にさせる。
またアレンジは精妙で、ギターの弾き語りだけではなくシンセやストリングスなども織り交ぜて曲ごとにバラエティを持たせている。歌詞の内容はおおむね内省的だが、日本に行った際の印象をネタにした“Kyoto”というナンバーもあるのは御愛嬌だ。なお、第63回グラミー賞で4部門にノミネートされており、イギリスの先鋭的バンドThe 1975とコラボするなど、今後の活躍が期待される逸材である。
ノルウェーのベルゲン出身のオーロラ(96年生まれ)の日本デビュー・アルバム「インフェクションズ・オブ・ア・ディファレント・カインド・オブ・ヒューマン」は、2018年と2019年に発表されたミニ・アルバムに新トラックを通過して1枚に仕上げたもので、収録時間は80分に達する。しかし、中身はし少しも弛緩することなく、密度が濃い。なお、オーロラは芸名ではなく、本名はオーロラ・アクスネスだ。
彼女のサウンドはびっくりするほどエンヤに似ている。また、ビョークやフローレンス・アンド・ザ・マシーンに通じるものも感じる。だが、エンヤよりロック色が強く、ビョークなどとは違って“濁り”や屈折した部分があまり見られない。あくまでも透明で清涼なサウンドストームに聴き手を巻き込んでゆく。また、けっこうハードな歌詞を扱っても、アプローチはストレートでシニカルな部分が無い。
エンヤと同じくエフェクトを効かせた多重録音をメインとしながらも、ボーナストラックではアコースティックバージョンでの“素”の歌声も聴かせる。2019年のディズニー映画「アナと雪の女王2」(私は未見)に参加。本人のプロフィールや経歴は面白く、ケイティ・ペリーやアンダーワールド、ショーン・メンデスといった有名どころからも一目置かれる、興味が尽きない北欧の異能だ。
フィリピンのイロイロ市出身で幼少時にイギリスに渡り、現在はロンドンを中心に活動するビーバドゥービーことビートリス・クリスティ・ラウス(2000年生まれ)のデビュー・アルバム「フェイク・イット・フラワーズ」は、コアなロックファンの間では話題になっている好盤だ。何より、この若さでグランジの真髄を受け継いだような陰影のあるサウンドを披露しているのが嬉しい。
彼女はスマッシング・パンプキンズやソニック・ユース、エリオット・スミスなどから影響を受けたらしく、楽曲もそのテイストを踏襲している部分が大きいのだが、この年代の等身大の内面を吐露したような歌詞と何の衒いも無いストイックな歌声が聴く者を惹き付ける。プロデューサーに元ザ・ヴァクシーンズのピート・ロバートソンを迎え、若手のポップ・ミュージシャンにありがちな打ち込み多用のライトな展開を廃し、硬派のギター・サウンドで押し切っている。
先のブリット・アワードではライジング・スター賞にノミネートされ、NMEアワーズではレーダー賞を受賞。他にも各アワードの新人賞を獲得している。すでに大ブレイクしているビリー・アイリッシュと肩を並べるのも時間の問題と思われるような、いわゆるZ世代を代表する注目株と言えるだろう。