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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「天外者(てんがらもん)」

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 2020年7月に惜しくも急逝した三浦春馬の存在感が存分に印象付けられる一作。彼の持つカリスマ性と、観る者を惹き付ける演技力を見ていると、我々は何という逸材を失ってしまったのかという、残念な気持ちで一杯になる。映画自体は(悪くはないものの)取り立てて評価出来るものではないが、彼の主演作としての最後の勇姿を拝めるという意味では、存在価値はかなり高い。

 1856年、薩摩藩士の五代才助(後の友厚)は若輩ながら藩主の島津斉興の覚えがめでたく、長崎海軍伝習所へ藩伝習生として派遣され、オランダ士官から航海術を学ぶ。さらに数々の経験を積む間に、坂本龍馬や岩崎弥太郎、伊藤博文らと知り合い、志を共にする。

 才助のスタンスは攘夷あるいは開国かというレベルの低い議論とは一線を画し、日本は交易や産業振興によって世界を相手に出来るだけの経済力を備えなければならないという、将来を見据えたものだった。維新後、明治政府の高官として起用されるが、やがて退官して大阪商法会議を設立。大阪から日本経済を興そうと奮闘する。明治初期の経済に大いなる貢献を果たした五代友厚の伝記映画だ。

 正直言って、このネタを2時間の映画に収めるのは無理な注文だ。何回かに分けてのシリーズ物にするか、あるいはテレビの大河ドラマで扱うべき題材だろう。ただ主人公の功績を追うだけではなく、遊女との悲恋やら親兄弟との確執やら何やらも挿入されているのだから尚更だ。

 田中光敏の演出は「利休にたずねよ」(2013年)の頃のような破綻は無く、マジメな仕事ぶりだとは思うが、映画的興趣を生み出すまでには至っていない。各キャラクターの動かし方や映像表現などが、多分にテレビ的である。まさに大河ドラマの総集編みたいだ。また、セリフ回しがヘンに現代的で、薩摩弁もあまり使われていないのは違和感がある。

 しかしながら、やっぱり三浦春馬が出てくると場が盛り上がるのだ。不屈の闘志を秘めた熱血漢を見事に具現化。たぶん五代はこういう人物だったのだろうという、説得力がある。三浦翔平に西川貴教、森永悠希、森川葵、かたせ梨乃、蓮佛美沙子、筒井真理子といった脇の面子も上手く機能している。大谷幸の音楽も悪くない。

 なお、終盤の大阪での集会場面には大阪府知事や大阪市長もエキストラとして参加しているらしいが(私は見つけられなかった ^^;)、彼らには“本業”に精進してもらいたいものだ(あるいは、それが無理ならば辞めて欲しい)。

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