(原題:Stop Making Sense )84年作品。ジョナサン・デミ監督といえば「羊たちの沈黙」(90年)や「フィラデルフィア」(93年)などで知られるが、個人的にはこの映画が最良作であると思う。何より、音楽ドキュメンタリーの分野において新機軸を打ち出したという意味で、本作の価値はかなり高い。音楽好きは要チェックだ。
74年から91年にかけて活躍したニューヨーク出身の先鋭的ロックグループ、トーキング・ヘッズの83年12月のロスアンジェルス公演の模様を収録している。冒頭、リーダーのデイヴィッド・バーンが単身ギターを抱えてステージに現れる。そしてバーンのソロが始まり、曲が進むごとにベース、ドラムス、ギター、コーラスと、メンバーがステージに登場する。やがて全員揃ったところでヒット曲“バーニング・ダウン・ザ・ハウス”あたりから一気にライヴは盛り上がる。
通常、この手の作品にありがちなサウンドとカメラがシンクロするような“ノリ”のショットや、ミュージシャンと聴衆の手拍子などがカットバックされるような、ケレン味たっぷりの演出は見当たらない。ただひたすらカメラはステージ上のトーキング・ヘッズを凝視する。ならば素っ気なく“ノリ”の悪いシャシンなのかというと、全然そうではない。このバンドの持つシンプルかつストレートな迫力が、レアな形で観る者をダイナミックに揺さぶってくる。
もちろん、当時のトーキング・ヘッズは余計なヴィジュアル的ギミックを弄さずとも聴衆を魅了する実力があったからこそ、この手法が活きたのだ。言い換えれば、凡百のミュージシャンならば、このアプローチは失敗する。実力派だから、ストイックな作風がそのパフォーマンスを十二分に発揮出来るのだ。
そしてラストナンバーの“クロスアイド・アンド・ペインレス”が演奏されるくだりになって、やっと観客が映し出される。そこは贅肉をそぎ落としたようなステージングと対比するかのように、熱狂の渦だ。これは演奏と聴衆との関係性に鋭く切り込むような、ミュージシャンとファンとの“馴れ合い”を廃した鮮烈なショットである。
タイトルの「ストップ・メイキング・センス」とは、アルバム「スピーキング・イン・タングス」に収録されている“ガールフレンド・イズ・ベター”の一節から取ったもので、理屈で考えるのはやめようという意味だ。その題名の通り、小賢しい“お約束”でファンに盛り上げを要求するスタイルを拒否し、純粋に音楽を楽しむべきだというメッセージが伝わってくる。歌詞対訳の字幕スーパーは無く、曲名紹介も省かれているのも、その主題に準拠していると言えよう。なお、このバンドのスピンアウトのプロジェクトであるトム・トム・クラブのナンバーも紹介されていたのも嬉しかった。
74年から91年にかけて活躍したニューヨーク出身の先鋭的ロックグループ、トーキング・ヘッズの83年12月のロスアンジェルス公演の模様を収録している。冒頭、リーダーのデイヴィッド・バーンが単身ギターを抱えてステージに現れる。そしてバーンのソロが始まり、曲が進むごとにベース、ドラムス、ギター、コーラスと、メンバーがステージに登場する。やがて全員揃ったところでヒット曲“バーニング・ダウン・ザ・ハウス”あたりから一気にライヴは盛り上がる。
通常、この手の作品にありがちなサウンドとカメラがシンクロするような“ノリ”のショットや、ミュージシャンと聴衆の手拍子などがカットバックされるような、ケレン味たっぷりの演出は見当たらない。ただひたすらカメラはステージ上のトーキング・ヘッズを凝視する。ならば素っ気なく“ノリ”の悪いシャシンなのかというと、全然そうではない。このバンドの持つシンプルかつストレートな迫力が、レアな形で観る者をダイナミックに揺さぶってくる。
もちろん、当時のトーキング・ヘッズは余計なヴィジュアル的ギミックを弄さずとも聴衆を魅了する実力があったからこそ、この手法が活きたのだ。言い換えれば、凡百のミュージシャンならば、このアプローチは失敗する。実力派だから、ストイックな作風がそのパフォーマンスを十二分に発揮出来るのだ。
そしてラストナンバーの“クロスアイド・アンド・ペインレス”が演奏されるくだりになって、やっと観客が映し出される。そこは贅肉をそぎ落としたようなステージングと対比するかのように、熱狂の渦だ。これは演奏と聴衆との関係性に鋭く切り込むような、ミュージシャンとファンとの“馴れ合い”を廃した鮮烈なショットである。
タイトルの「ストップ・メイキング・センス」とは、アルバム「スピーキング・イン・タングス」に収録されている“ガールフレンド・イズ・ベター”の一節から取ったもので、理屈で考えるのはやめようという意味だ。その題名の通り、小賢しい“お約束”でファンに盛り上げを要求するスタイルを拒否し、純粋に音楽を楽しむべきだというメッセージが伝わってくる。歌詞対訳の字幕スーパーは無く、曲名紹介も省かれているのも、その主題に準拠していると言えよう。なお、このバンドのスピンアウトのプロジェクトであるトム・トム・クラブのナンバーも紹介されていたのも嬉しかった。