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Channel: 元・副会長のCinema Days
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NHK「デジタルハンター 謎のネット調査集団を追う」を見た。

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 去る5月17日にNHK-BS1で放映されたドキュメンタリー「デジタルハンター 謎のネット調査集団を追う」は、とても興味深い内容だった。昨今、インターネット上で公開されている画像やSNSの情報を徹底的に解析することで、世界を騒がせている事件の真相に迫ろうという、新時代のジャーナリストたちが存在する。彼らが採用している技法は“オープンソース・インベスティゲーション”と呼ばれ、現場にはほとんど足を運ぶことはないが、粘り強い追求と鋭いひらめきにより、従来のマスコミがカバーしていなかった特ダネを次々とモノにしてゆく。いわば現代版の安楽椅子探偵だ。

 とにかく、彼らの実績には目を見張るばかり。カメルーン奥地で起きた虐殺事件の真相を暴いたのを皮切りに、ロシアの関与が疑われたウクライナ上空でのマレーシア航空機撃墜事件、イランのテヘランで起きたウクライナ航空機の墜落事件、さらには武漢から始まったコロナ禍の実態を伝えるSNSでの情報が当局側によって削除されたことを突き止めるなど、どれも一国の体制自体を揺るがすようなスクープのオンパレードだ。



 しかも、彼らの行動は決して特定個人や特定団体に縛られない。世界各地から情報を提供するエキスパートが存在し、不定形かつ能動的に事件の実相を求めて活動を続ける。そのユニットのひとつであるイギリスの調査集団“ベリングキャット”では、人材の育成と共にそのノウハウを世界中のマスコミに伝授するため積極的なスタッフの派遣を行っている。今やBBCやニューヨーク・タイムズといった大手メディアにも“オープンソース・インベスティゲーション”のチームは存在するのである。

 番組のハイライトが、オーストラリアを代表するシンクタンクであるオーストラリア戦略政策研究所が“オープンソース・インベスティゲーション”の手法を用いて、新疆ウイグル自治区における中国政府による現地人への迫害を暴く場面だ。時系列的に並べられた証拠により、理路整然と現地の情勢を明らかにする、そのプロセスには唸った。

 ひるがえって日本の状況はどうか。新聞・テレビといった旧来型のメディアがいまだに幅を利かせ、しかもそれらは体制側と癒着している。気骨を見せているのは一部の週刊誌ぐらいだが、それでも昔ながらの取材方法で何とか凌いでいるような始末だ。いま最も“オープンソース・インベスティゲーション”のスキームが必要なのは、我が国のマスメディアではないのか。忖度や遠慮が一切通用しない、デジタルハンターたちの活躍を是非とも見たいものである。

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