「パラサイト 半地下の家族」
(英題:PARASITE)評判通りの面白さだ。もっとも、万全の出来ではなく脚本にはけっこう瑕疵がある。また、過去の諸作との類似性も見逃せない。それでも、全編にみなぎる作劇の求心力と、高い問題意識が観る者をとらえて放さない。第72回カンヌ国際映画祭にて大賞を獲得しているが、久々に納得ずくの選出であったと思う。...
View Article「エクストリーム・ジョブ」
(原題:極限職業)設定はすこぶる面白いのだが、演出と脚本のレベルがあまり高くないため、終わってみればB級活劇の域を出ていない。ギャグの繰り出し方も泥臭く、全編通してあまり笑えず。とにかく、こういうネタではもっと盛り上がって然るべきだ。...
View ArticleNmodeのアンプ、X-PM7MKIIを購入した(その1)。
長年使っていたACCUPHASEのアンプがさすがに古くなったので、思い切って買い換えた。当初は同じACCUPHASE製で良いかと思っていたのだが、現行モデルは昔に比べて軒並み高くなっており、予算内で手に入る機種はそれまで使っていたモデルに比べて定格の面で見劣りしたため、他のメーカー品を探してみた。その結果導入したのがNmodeのX-PM7MKIIである。定価は税抜きで30万円だ。...
View ArticleNmodeのアンプ、X-PM7MKIIを購入した(その2)。
先日購入した新しいアンプ、NmodeのX-PM7MKIIは、音質は優秀ながら機能は絞り込まれている。フロントパネルにあるツマミ類は電源スイッチを別にすれば、ボリュームと入力切替のみだ。トーンコントロールはもちろん、ヘッドフォン端子も無い。アナログプレーヤーを繋ぐためのフォノ端子も省かれている。だから、多機能を求めるユーザーはお呼びではない。...
View Article「ビリィ・ザ・キッドの新しい夜明け」
86年作品。途轍もなくいい加減な設定と、人を食ったストーリー、そしてデタラメなキャラクターの跳梁跋扈と、普通に考えれば駄作あるいは失敗作にしかならないエクステリアを持つ映画ながら、実際観たら面白い。思い付きのような絵空事をエンタテインメントとして昇華してしまう才能と、それを支える優秀スタッフとキャストが揃えば、単なる“怪作”も“快作”へと変化してしまうものなのだ。...
View Article「マーラー」
(原題:MAHLER)74年イギリス作品。ケン・ラッセル監督の“異常感覚”とも言うべきユニークすぎるタッチと、本来的な伝記映画のルーティンが良い按配にミックスされ、普遍性と作家性が両立する得難い作品に仕上げられている。また、視点を当事者ではなく傍らにいる者(この場合はマーラーの妻)に合わせている点も、素材をいたずらに高踏的に持ち上げない点で的確であったと言えよう。...
View Article「リチャード・ジュエル」
(原題:RICHARD JEWELL)日頃より、クリント・イーストウッドの監督作は“観る価値無し”と決めているのだが、本作はけっこう評判が良かったので劇場に足を運んでみた。結果、観終わって“やっぱり、時間の無駄だったな”という感想しか持てない。とにかく、この生温い描写と感情移入が著しく困難な登場人物のオンパレードには、辟易するしかない。...
View Article大根役者を持て囃す愚(その2)。
タイトルに“その2”とあるが、“その1”をアップしたのは2019年の11月である(笑)。およそ2か月以上のインターバルがあり、何やら“証文の出し遅れ”みたいな感があるが、とりあえず御容赦願いたい。...
View Article「ミッドナイト・ラン」
(原題:MIDNIGHT RUN)88年作品。マーティン・ブレスト監督は寡作のようだが、その中でも一番出来が良いと思われるのが本作。犯罪が絡んだロード・ムービーという王道の設定で、演出にテンポもキレもあり、加えてキャストは皆芸達者。コメディ仕立てで最後まで楽しませてくれる。「セント・オブ・ウーマン...
View Article「風の電話」
作劇上の欠点がかなり目立つ。その意味では、諏訪敦彦監督が前に“日本で”撮った傑作「M/OTHER」(99年)と比べれば質的に少し落ちる。何しろタイトルにある“風の電話”そのものが、終盤に取って付けたように出てくるだけなのだ。しかしながら、少なくない瑕疵を余裕でカバー出来るほどの切迫したテーマの設定と大きな求心力により、見応えのある映画に仕上がっている。キャストの力演も見逃せない。...
View Article韓国映画のオスカー獲得と日本映画の現状。
去る2月10日(日本時間)に発表された第92回米アカデミー賞で、韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が4冠を達成した。私は国際長編映画賞と脚本賞は獲得すると思っていたが、まさか作品賞にまで輝くとは予想外だった。それも外国語映画では初の栄誉。オスカーの歴史を変えたとも言える快挙だ。対して日本映画は(得意のアニメーションをはじめ)ノミネートもされていなかった。...
View Article「ロマンスドール」
小綺麗に、肌触り良く仕上げられているが、ドラマにあまり深みは無い。それでも最後まで観ていられたのは、キャストの頑張りに尽きる。ただし、その“頑張っていたキャスト”が主役ではなく脇役の方であったのには違和感を覚えた。そもそも、こういうネタを取り上げるには、この監督で良かったのかという疑問もある。もっとアクの強い演出家が担当すれば、盛り上がったのではないだろうか。...
View Article「男と女 人生最良の日々」
(原題:LES PLUS BELLES ANNÈES D'UNE VIE)ひたすら退屈な映画だった。何のために作った映画なのか不明だし、観る側もどこに感情移入して良いのか分からない。救いは上映時間が1時間半と短いこと。もしも2時間以上も引っ張っていたなら、確実に途中で寝ていた。...
View Article日本フィルのコンサートに行ってきた。
去る2月16日(日)に福岡市中央区天神にある福岡シンフォニーホールで開催された、日本フィルハーモニー交響楽団の公演に聴きに行った。曲目はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲と、ブラームスの交響曲第一番である。指揮はロシア出身のアレクサンドル・ラザレフ、ヴァイオリン独奏は堀米ゆず子だ。...
View Article「AI崩壊」
一見すると安っぽい活劇で、脚本にも難がある。だいたい、コンピューターが反乱を起こすというネタ自体が古めかしい。しかし、ここで扱われている主題はタイムリーでシリアスだ。言い換えれば、このテーマが今日性を獲得してしまう世相の方が問題なのだ。その意味では、観て損は無い。...
View Article「わが青春のフロレンス」
(原題:Metello )70年イタリア作品。20世紀初頭のフィレンツェ(フロレンス)を舞台に、労働運動に身を投じた青年の、波乱万丈の日々を描いた社会派ドラマ。・・・・というのは表向きで、実相は苦労しながらも世の中を都合よく渡ってゆくプレイボーイ野郎の痛快一代記だ(笑)。当時はアイドル的な人気を集めていた歌手のマッシモ・ラニエリが主役で、彼の色男ぶりがとことん強調される作劇も微笑ましい。...
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