「メランコリック」
脚本には随分と無理がある。しかし、それを補って余りある展開の面白さ、キャストの大健闘、そして作者の意識の高さにすっかり感心してしまった。本年度の邦画を代表する痛快作だ。聞けば第31回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門で監督賞を獲得しているとのことだが、それも十分うなずける。...
View Article「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」
(原題:T-34)突っ込みどころはけっこうあるが、それを忘れてしまうほどの面白さ。戦車が“主役”になった戦争アクション物の代表作として、映画ファンの記憶に残るのではないだろうか。少なくとも、アメリカ映画「フューリー」(2014年)なんかより、はるかにヴォルテージが高い。...
View Article「戦場のピアニスト」
(原題:The Pianist )2002年作品。ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、シュピルマンが戦時中に体験する苦難を描いたドラマだが、ロマン・ポランスキー監督の映画に月並みな“感動”などを求めるのは筋違いだと思う。この作品のクライマックスは“主人公が音楽好きのドイツ将校の前でショパンを弾き、戦争のため長らく忘れていた芸術家としての魂を取り戻す場面”ではない。...
View Article「楽園」
本年度の日本映画を代表する力作である。本作を観て“ミステリーの体を成していない(だからつまらん)”とか“辛気臭いだけの映画”とか“何が言いたいのか分からない”とかいう感想しか述べられないのならば、それは“鑑賞力”が低いのだと思う。そもそも原作者が吉田修一だ。単純明快なミステリー劇を期待するのは適当ではない。...
View Article大根役者を持て囃す愚。
先般の沢尻エリカ容疑者の逮捕により、彼女が重要な役で出演する2020年放映予定のNHK大河ドラマの取扱いが難しくなっている。以前より疑惑があった沢尻をわざわざキャスティングしたNHKの脇の甘さは問題だが、やっぱり無節操に長年薬物を使い続けた本人の責任は逃れられない。残念ながら、彼女が第一線に復帰することは不可能だろう。まさに“後悔先に立たず”である。...
View Article「レッド・ドラゴン」
(原題:Red Dragon)2002年作品。ジョナサン・デミ監督「羊たちの沈黙」(91年)よりも以前のエピソードを描く“レクター博士三部作”の一作目。リドリー・スコット監督の「ハンニバル」(2001年)も含めたハンニバル・レクター・シリーズの中では、一番楽しめる。トマス・ハリスによる原作の第一回目の映画化であるマイケル・マン監督の快作「刑事グラハム...
View Article「ラスト・ムービースター」
(原題:THE LAST MOVIE STAR )バート・レイノルズの全盛期を少しでも知っている映画ファンならば、感慨深いものになること必至だ。しかも、先日観たロバート・レッドフォード主演の「さらば愛しきアウトロー」がレッドフォードに馴染みの無い観客は“お呼びでない”といった内容だったのに対し、本作はたとえレイノルズの映画を観たことが無くても、その良さは伝わってくる。鑑賞する価値のある佳編だ。...
View Article「最初の晩餐」
先日観た市井昌秀監督の「台風家族」と似た設定の映画だが、出来映えは圧倒的に本作の方が良い。これは題材をオフビートに捉えて向こう受けを狙っただけのシャシンと、多少変則的なシチュエーションながら正攻法に徹した作品との差である。つまりは作者の意識の高さの違いだ。特にこの映画の監督である常盤司郎はこれが長編デビュー作であり、今後を期待させる。...
View Article「i 新聞記者ドキュメント」
素材の捉え方には大いに問題があるとは思うが、決して観て損はしない。現時点では斯様な作劇しか出来なかったこと、そしてこのようなトピックしか取り上げられなかったこと等、ドキュメンタリー映画としての出来そのものよりも、作品の背景および状況を探ることで興趣を生み出すという、面白い展開が見られる。...
View Article「クライム・オブ・パッション」
(原題:Crime of Passion)84年作品。ケン・ラッセル監督のアヴァンギャルドな個性が全面展開している一編で、とても楽しめる。もちろん、通常のラブストーリーやサスペンス劇を期待して接すると完全に裏切られるが(笑)、同監督の持ち味を認識しているコアな観客にとっては、濃密な時間を堪能出来ること請け合いであろう。...
View Article「ターミネーター:ニュー・フェイト」
(原題:TERMINATOR:DARK FATE)どうしようもない出来。パート3以降の作品を“無かったことにする”という荒業を採用し、傑作との誉れ高いパート2(91年)の“正式な続編”として作られたにもかかわらず、内実は続編ではなく低レベルの“リメイクもどき”に留まっている。久々にジェームズ・キャメロンが関わっていながらこの有様。企画段階で却下されるべきネタだ。...
View Article「卒業白書」
(原題:Risky Business)83年作品。トム・クルーズのフィルモグラフィの中では、我々がよく知る彼のキャラクター(?)が確立する前の、いわば八方破れ的な役の選び方をしていた若い時期の代表作。こういう無軌道な役柄は、現在の彼にはオファーはまず来ない。その意味で興味深いし、映画自体もけっこう楽しめる。...
View Article「アイリッシュマン」
(原題:THE IRISHMAN)久々に現れた本格的ギャング映画で、十分な手応えを感じる出来である。まさに“我々が観たかったマーティン・スコセッシ監督作品”そのものだ。しかしながら、Netflixの配信を前提にした一部劇場のみの公開、そして何より3時間半もの長尺といった形態は、今後映画ファンの間で議論を呼ぶことは必至だろう。...
View Article「ひとよ」
贅沢なキャスティングにも関わらず、ほとんど機能していない。設定は絵空事で、展開は説得力を欠く。加えて余計なサブ・ストーリーが全体的な作劇を不格好なものにしてしまった。聞けば原作は舞台作品とのことだが、演劇における方法論を工夫も無く移設した居心地の悪さも感じられる。いずれにしろ、評価出来ない内容だ。...
View Article「ニューヨークの恋人」
(原題:Hero at Large )79年作品。いかにも軟派なラブコメみたいな邦題だが、実際はそうではない。とても他愛がなくて楽しく善意に溢れた、アメリカ映画らしいヒューマン・コメディの佳作だ。公開当時は地方では二本立ての“メインではない方”という扱いだったが、思わぬ拾いもので、得した気分になったものだ。...
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