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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ニューヨークの恋人」

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 (原題:Hero at Large )79年作品。いかにも軟派なラブコメみたいな邦題だが、実際はそうではない。とても他愛がなくて楽しく善意に溢れた、アメリカ映画らしいヒューマン・コメディの佳作だ。公開当時は地方では二本立ての“メインではない方”という扱いだったが、思わぬ拾いもので、得した気分になったものだ。

 主人公スティーヴは、プロードウェイを目指してはいるが今は部屋代も滞りがちな貧乏舞台俳優だ。向かいの部屋に住むCM製作関係のキャリアウーマンであるマーシュに心惹かれている。彼はとても気が良く、ありついた仕事も友だちに譲ってしまい、アルバイトとして封切りを控えたヒーロー映画「キャプテン・アベンジャー」の宣伝に駆り出される。



 コスプレのまま彼がスーパーで買い物をしていると、チンピラ強盗が現れるが、彼の姿を見て驚いて退散する。これがマスコミに取り上げられて評判になり、ご機嫌のスティーヴはキャプテン・アベンジャーとして仕事を探す。一方、広告会社の社長ウォルターは、次回のニューヨーク市長選挙の市長側の選挙参謀カルヴィンに、支持率が落ちている現市長に新しいイメージを提供するため、街の話題になっているアベンジャーと市長選を結び付けることを持ちかける。

 善意の主人公が試練に耐え、やがて恋と名誉を獲得するという、つまりは予定調和の話なのだが、語り口の上手さで観る者をエンディングまで惹き付ける。監督のマーティン・デヴィッドソンは往年のフランク・キャプラ監督の作風をトレースしているようで、たとえば名誉市民に選ばれたスティーヴが皆の前で真心のこもった演説をぶつあたり、それが顕著に見て取れる。

 政治家と広告屋のたくらみが明るみになり、その巻き添えでニューヨークから姿を消すハメになった主人公が、その前にヒーローとして最後の見せ場に向かい合うくだりは盛り上がる。主演のジョン・リッターは往年の西部劇役者テックス・リッターの息子だが、ここでは好青年を嫌味なく演じていてポイントが高い。残念ながら彼は若くして世を去ってしまったが、今から思うと良い役者だったとつくづく思う。ヒロイン役のアン・アーチャーは魅力的だし、バート・コンビーとケヴィン・マッカーシーの悪役2人組も好調だ。

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