「SHADOW 影武者」
(原題:影)ストーリー自体はさほど面白くはない。各キャラクターの掘り下げも上手くいっていない。しかしながら、映画の“外観”は目覚ましい美しさを誇っている。また、アクション場面の造型は屹立した独自性を獲得している。一応、張藝謀監督の面目は保たれたと言って良いだろう。...
View Article「限りなく透明に近いブルー」
79年作品。作家の村上龍には5本の監督作があるが、概ね評論家筋にはウケが悪く興行的にも低評価である。そのせいか、96年製作の「KYOKO」のあとは映画を撮っていない。ただし本作はその中でも一番マシな出来だと、個人的には思う。原作は村上のデビュー作で第75回の芥川賞受賞作だが、私は未読。ただし大まかなストーリーは知っている。...
View Article「アイネクライネナハトムジーク」
伊坂幸太郎による原作は未読だが、彼の小説はすでに10回以上映画化されているものの、成功している例はあまりない。時制や舞台をランダムに配置して伏線を張りまくり、終盤で一気にそれらを回収するという“手口”は、映画にする上でストーリーの追尾だけに気を取られると、中身の薄い作品に終わってしまう。残念ながら、本作もその轍を踏んでいる。...
View Article「守護教師」
(英題:ORDINARY PEOPLE )マ・ドンソク演じる強面でマッチョな主人公が体育教師として赴任し、街で頻発する事件を解決するという話だ。当然のことながら、腕っ節を活かして悪い奴らをバッタバッタとなぎ倒す痛快巨編だと誰でも思うし、日本版ポスターでもそういう雰囲気が前面に押し出されている。しかし、主人公が暴れ回るのはほんの数回なのだ。これは“看板に偽りあり”である(苦笑)。...
View Article「人間失格 太宰治と3人の女たち」
要するに、中身の無い映画だ。いや、そもそも監督が蜷川実花である。中身の詰まった映画を期待する方がおかしい。本作を観た理由は、太宰治と最後に心中する相手に扮した二階堂ふみのパフォーマンスを堪能するためであり、その“目的”はクリアすることは出来た(笑)。それ以外は、本当にどうでもいい。...
View Article「ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち」
(原題:THE HUMMINGBIRD PROJECT )題材は面白そうだが、話の組み立て方が上手くない。実話を基にしているというのなら、その実話自体があまりスマートではないと結論付けられるのではないか。本筋とは関係のないモチーフが挿入されているのも、あまり愉快になれない。本国では批評家からの評価は平凡なものに留まっているらしいが、それも頷ける。...
View Article「ジャスティス」
(原題:...And Justice for all)79年作品。一応は社会派と呼ばれるノーマン・ジュイソン監督作で、舞台も時事ネタらしく法曹界になってはいるが、ブラックな笑劇仕立ての法廷物という、かなりの“変化球”である。まあ、この作家の守備範囲の広さを確認出来るし、キャストの熱演もあるので、見応えはあると言えよう。...
View Article「宮本から君へ」
たまらなく不愉快な映画である。本年度のワーストワンの有力候補だ。現時点でこのような“非・スマート”な内容のシャシンが作られたことに対し、呆れるのを通り越して危機感さえ抱いてしまった。しかも、本来は芸達者であるはずのキャストを揃えてこの有様。原作が有名コミックだか何だか知らないが、これは企画段階で製作を取り止めて当然のネタだと思う。...
View Article「惡の華」
思春期の葛藤や苦悩を露悪的にさらけ出し、それをスラップスティック風味でエンタテインメントに昇華させようという作戦のようだが、大して上手くいっているとは思えない。しかし、見逃せないモチーフがあり、結果としてスクリーンから目が離せなかった。ひとつの長所が低調な映画を大幅に底上げしてくれるケースもあるのだ。...
View Article「太陽の年」
(英題:YEAR OF THE QUIET SUN )84年作品。第41回ヴェネツィア国際映画祭で大賞を獲得しているが、主要アワードの受賞作が良作とは限らないというのは、映画ファンの間では定説(?)である。ところが本作は、大半の観客がその優れた内容を認識出来るという、希有な存在だ。80年代以降のポーランド映画としても、大きな業績であると思う。...
View Article「帰れない二人」
(英題:ASH IS PUREST WHITE )かつて注目作を放ったジャ・ジャンクー監督も、昨今はネタ切れのようだ。前作「山河ノスタルジア」(2015年)では冴えない題材を小手先の映像ギミックで糊塗しようとしたが(もっとも、そのことを本人は自覚はしていないと思われる)、この映画は本来のスタイルに立ち返ったものの、何ら新しい提案が成されていない。正直、長い上映時間が辛く感じた。...
View Article「ホテル・ムンバイ」
(原題:HOTEL MUMBAI)目を見張る力作で、終始圧倒されっぱなしだった。この臨場感、この迫真性、まるで観ている側がテロリズムがもたらす修羅場に放り込まれたような、尋常ではない映像体験を強いる。そのへんのホラー映画よりも数倍怖く、並のアクション映画よりも数十倍スリリングだ。本年度の外国映画の収穫である。...
View Article「蜜蜂と遠雷」
企画および製作側には、クラシック音楽を理解していない者、それどころかロクに聴いたことも無い者が多数派を占めるのではないか。そう感じるほど、この映画はサマになっていない。もとより日本映画は音楽を題材に扱うことは不得手であり、ましてや筋書きや段取りの吟味や練り上げを怠ったまま、原作が有名であるという理由だけでゴーサインを出したと思しき状況では、良い映画が出来るはずもないのだ。...
View Article「雪の断章 情熱」
85年作品。ストーリー展開はそれほど特筆できるものは無いが、大胆極まりないカメラワークと優れた人物描写により、見応えのある作品に仕上がった。相米慎二監督としても、キャリア中期の代表作と言っても良い。...
View Article「真実」
(原題:LA VERITE )日本人演出家が撮った外国映画としては、目立った破綻も無く本場のフランス映画としても通用する“体裁”は整えていると思う。しかし、ストーリーが面白くない。さらにはこれが淡々と抑えたタッチで進行するため、観ている間は眠気との戦いに終始した。同じ話を、日本を舞台に国内キャストで作った方が、まだ興味は持てたかもしれない。...
View Article「イエスタデイ」
(原題:YESTERDAY )突っ込みどころが少なからずあり、本来ならば評価しないシャシンなのだが、全編に網羅されているビートルズのナンバーと、それらが流れるタイミングの巧みさに、すっかり楽しんでしまったというのが本音だ。ダニー・ボイル監督作としても、これだけ音楽の使い方が上手くいっているのは「トレインスポッティング」(96年)以来だろう。...
View Article山口市に行ってきた。
山口市に足を運ぶのは2回目だが、前回は二十数年前であり、しかも用事があったので名所旧跡などは一切見ていなかった。観光のために訪れたのはこれが初めてになる。山口県ならば下関市や萩市および北長門が観光地として有名だが、山口市は県庁所在地であるにも関わらず、観光スポットとしては地味な存在だと思う。だが、決して魅力には欠けていない。特に、市内香山町の瑠璃光寺にある国宝の五重塔は、絶対に見る価値はある。...
View Article岸田劉生展
前回のアーティクルで山口市に行ってきたことを述べたが、ちょうど山口県立美術館で岸田劉生展が開催されていたので、足を運んでみた。岸田劉生といえば重要文化財である「麗子微笑」(1921年作)は知っていたが、その生涯や他の作品についてはほとんど認識が無かった。それらを知ることが出来ただけでも、個人的には有意義なイベントだった。...
View Article「スペシャルアクターズ」
脚本の詰めが甘い。「カメラを止めるな!」(2017年)で社会現象を巻き起こした上田慎一郎監督の劇場用長編第2弾だが、彼の身上であるシナリオの精度が斯様に低い状態では、いくら演出で引っ張ろうとしても映画は盛り上がらない。プロデューサーとしては、脚本のさらなるチェックが必要であった。...
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