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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「永遠の門 ゴッホの見た未来」

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 (原題:AT ETERNITY'S GATE)誰でも知っている著名な画家を主人公にした映画(ドキュメンタリーを除く)は、やはり作るのが難しいのだろう。画家の業績を示す数々の名画は、それ自体が“ヴィジュアル”であり、映画の映像はそれらと対峙しなければならない立場上、明らかに分が悪い。映画の作り手がどんなに意匠を凝らして“ヴィジュアル”を作り上げようとも、名画一枚の存在感が上回ってしまうのだ。残念ながら本作も、その轍を踏んでいると言わざるを得ない。

 1887年、ファン・ゴッホはパリのクリシー大通りのレストラン・シャレで展覧会を開くが、絵画界ではまったく評価されずに終わった。偶然出会った画家ゴーギャンの助言に従い、翌年ゴッホは南仏のアルルに居を移すが、封建的な風土には馴染まない。そこにゴーギャンがアルルを訪れ、ゴッホは彼と一緒に創作に励む。だが、所用でゴーギャンはパリに戻ることになると、ゴッホの精神状態は途端に不安定になる。



 普通のアプローチではゴッホの人物像に迫れないと考えたのか、監督のジュリアン・シュナーベルは全編これ手持ちカメラを使用し、不安定な画面構成に終始する。主人公の揺れ動く内面を表現したかったのかもしれないが、結果として観ていて目が疲れるだけだ。何ら強いメッセージ性も感じられない。

 加えて、意味不明の繰り返しのショットやシークエンスが散見され、いい加減面倒臭くなってくる。結局、策を弄したものの、ゴッホの絵の持つ存在感に映画のヴォルテージが全然追いついていない。ラストのケレン味も空振りだ。ゴーギャンや弟テオをはじめとする周囲の人間との関係性も深く突っ込まれていない。

 主演のウィレム・デフォーは頑張っているが、劇中では30歳代であるはずのゴッホを60歳をとうに過ぎた彼が演じているのは違和感がある。ルパート・フレンドやマッツ・ミケルセン、マチュー・アマルリック、オスカー・アイザックら他の面子も印象が薄い。しかしながら、タチアナ・リソフスカヤによる音楽だけは素晴らしい。最初聴いたときに既成曲を起用したのかと思ったら、すべてオリジナルだという。流麗極まりない旋律の連続で、大いに堪能した。サントラ盤はオススメだ。

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