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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「i 新聞記者ドキュメント」

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 素材の捉え方には大いに問題があるとは思うが、決して観て損はしない。現時点では斯様な作劇しか出来なかったこと、そしてこのようなトピックしか取り上げられなかったこと等、ドキュメンタリー映画としての出来そのものよりも、作品の背景および状況を探ることで興趣を生み出すという、面白い展開が見られる。

 本作の“主人公”である東京新聞の望月衣塑子記者を、私はまったく評価していない。劇中で何度も取り上げられる菅官房長官との記者会見における“攻防戦”は、一見望月が菅をやり込めているようだが、実際には進行役から頻繁に“主旨に沿った質問をしてください”との警告が発せられることからも分かるように、望月のパフォーマンスにより菅が困惑しているに過ぎないことが窺われる。



 そもそも、一人の記者の質問に多大の時間を割かれること自体、会見の意義に反するものであろう。また、望月はこれだけエネルギッシュに動いていながら、彼女が政界を揺るがすようなスクープをモノにしたという話は聞いたことが無い。社会部の記者でありながら、政治部の職域に首を突っ込んでいるのも意味不明だ。

 そんな彼女を、監督の森達也はヒーロー視する。かつて「A」(97年)や「FAKE」(2016年)で見せたような、対象から一歩も二歩も引いたような姿勢からはまるで異なるスタイルだ。終盤に挿入されるアニメーションも唐突かつ極論じみていて、戸惑うばかりである。

 だが、よく考えてみると、作者としては彼女を取り上げるのは“仕方がない”とも言えるのだ。なぜなら、現政権およびそれをチェックすべきマスコミのあり方に本気で噛みついている新聞記者は、望月しかいない(ように見える)からだ。政権の事なかれ主義の体質、記者クラブの閉鎖性、忖度ばかりのマスコミといった愉快ならざる事象を取り上げるにあたって、望月のようなトリックスターを画面の中心に据えるしかなかった事情が垣間見える。本当は、真に合理的なスタンスで政権に対峙するジャーナリストを活写すべきだったのだか、森監督には(そして我々にも)そういう人材を見つけられないのが実情だ。

 個人的には、望月よりも脇のキャラクターの方が印象的だった。森友学園の籠池夫妻は、そこいらのお笑い芸人より面白い。レイプ疑惑事件の渦中にある伊藤詩織は、(不謹慎を承知で言えば)とても美人だ。そして福島県の地元民が洩らす“こんな事態になっても、結局選挙では自民党が勝つんだよね”というセリフは重いものがあった。森監督には、ぜひとも次回は“与党を盲目的に支持する者たち”や“増長する与党に手を拱いているだけの野党”といった題材を扱ってほしい。

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