(原題:...And Justice for all)79年作品。一応は社会派と呼ばれるノーマン・ジュイソン監督作で、舞台も時事ネタらしく法曹界になってはいるが、ブラックな笑劇仕立ての法廷物という、かなりの“変化球”である。まあ、この作家の守備範囲の広さを確認出来るし、キャストの熱演もあるので、見応えはあると言えよう。
ボルチモアに住む弁護士アーサー・カークランドは、曲がったことが大嫌いな熱血漢。だが、しばしば暴走してトラブルを引き起こしていた。彼はジェフという若者が軽微な罪で逮捕された事件と、性的マイノリティである黒人ラルフが強盗の一味として告訴されている事件、この2つの案件を抱えている。そんなある日、アーサーと対立している高圧的なフレミング判事が婦女暴行罪で告訴される。そして何と、アーサーを弁護人として指名したのだ。渋るアーサーだったが、ジェフの保釈を条件に嫌々ながら引き受ける。ところが、この一件はアーサーを窮地に陥れようという判事側の策略だった。
とにかく、裁判所を取り巻く連中の奇々怪々ぶりには呆れつつも笑ってしまう。フレミングは極端な権威主義者で、レイフォード判事は自殺志願。被告人の連中も変わった奴ばかり。同僚のジェイは情緒不安定。アーサーの大仰な言動も気にならないほどだ(笑)。
後半にはフレミングの悪巧みは露見するが、それでも主人公は弁護しなければならない。職務と真実の板挟みになって身悶えするアーサーの姿は、法律家としてのディレンマを活写して興味深い。ギリギリの逡巡の果てに、主人公は大詰めの法廷で勝負に出る。これはかなりの見せ場になるのだが、ハリウッドの伝統的な裁判劇にあったスカッとした解決とは一味も二味も違う。伏魔殿としての法曹界を痛烈に皮肉っていて、その意味では訴求力が高い。
主演のアル・パチーノのパフォーマンスは圧巻で、理性が吹っ飛ぶ寸前のアーサーの危うい内面を見事に表現している。ジャック・ウォーデンやジョン・フォーサイス、リー・ストラスバーグといった重厚感のあるベテランを配しているところも良い。ヒロイン役のクリスティン・ラーティも魅力的だ。ヴィクター・J・ケンパーによる撮影とデーヴ・グルーシンの音楽は好調。シニカルなラストと共に、異色のリーガル・スリラーとして記憶に残る一編だ。
ボルチモアに住む弁護士アーサー・カークランドは、曲がったことが大嫌いな熱血漢。だが、しばしば暴走してトラブルを引き起こしていた。彼はジェフという若者が軽微な罪で逮捕された事件と、性的マイノリティである黒人ラルフが強盗の一味として告訴されている事件、この2つの案件を抱えている。そんなある日、アーサーと対立している高圧的なフレミング判事が婦女暴行罪で告訴される。そして何と、アーサーを弁護人として指名したのだ。渋るアーサーだったが、ジェフの保釈を条件に嫌々ながら引き受ける。ところが、この一件はアーサーを窮地に陥れようという判事側の策略だった。
とにかく、裁判所を取り巻く連中の奇々怪々ぶりには呆れつつも笑ってしまう。フレミングは極端な権威主義者で、レイフォード判事は自殺志願。被告人の連中も変わった奴ばかり。同僚のジェイは情緒不安定。アーサーの大仰な言動も気にならないほどだ(笑)。
後半にはフレミングの悪巧みは露見するが、それでも主人公は弁護しなければならない。職務と真実の板挟みになって身悶えするアーサーの姿は、法律家としてのディレンマを活写して興味深い。ギリギリの逡巡の果てに、主人公は大詰めの法廷で勝負に出る。これはかなりの見せ場になるのだが、ハリウッドの伝統的な裁判劇にあったスカッとした解決とは一味も二味も違う。伏魔殿としての法曹界を痛烈に皮肉っていて、その意味では訴求力が高い。
主演のアル・パチーノのパフォーマンスは圧巻で、理性が吹っ飛ぶ寸前のアーサーの危うい内面を見事に表現している。ジャック・ウォーデンやジョン・フォーサイス、リー・ストラスバーグといった重厚感のあるベテランを配しているところも良い。ヒロイン役のクリスティン・ラーティも魅力的だ。ヴィクター・J・ケンパーによる撮影とデーヴ・グルーシンの音楽は好調。シニカルなラストと共に、異色のリーガル・スリラーとして記憶に残る一編だ。