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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「スペシャルアクターズ」

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 脚本の詰めが甘い。「カメラを止めるな!」(2017年)で社会現象を巻き起こした上田慎一郎監督の劇場用長編第2弾だが、彼の身上であるシナリオの精度が斯様に低い状態では、いくら演出で引っ張ろうとしても映画は盛り上がらない。プロデューサーとしては、脚本のさらなるチェックが必要であった。

 主人公の和人は売れない役者。しかも、緊張すると気絶するという“持病”を抱えており、将来の見えない日々を送っていた。ある日、彼は数年ぶりに弟の宏樹と再会する。宏樹は“スペシャル・アクターズ”という俳優事務所に属しており、そこでは映画やドラマだけでなく、演じることを使った“なんでも屋”のような業務もおこなっていた。成り行きで同事務所に入った和人は、最初はぎこちなかったが、次第に仕事に慣れてゆく。



 ある時、一人の女子高生が事務所に駆け込んでくる。彼女の姉は両親が亡くなったことにより若くして老舗旅館を継いだが、弱みにつけ込んだカルト宗教にハマってしまい、旅館を教団に明け渡そうとしているという。アクターズの面々は悪徳教団の企みを打ち破るべく、プランを練って稽古に励む。だが、好事魔多し。実戦では想定外のトラブルが次々と発生。果たして彼らは目的を達成することが出来るのか・・・・という話だ。

 ハッキリ言って、和人が事前にこの教団及び旅館のことをネット等である程度調べてしまうと、筋書き自体が成り立たなくなる。また、一時は起業していたという宏樹のことも、ネットで検索すれば状況は少しは掴めるはずだ。それを和人にさせないようにするために工夫する必要があるが、映画は完全スルーしている。

 教団の教祖は(表向きは)口がきけないという設定で、しかも極度の怖がりだ。こういう“攻めればすぐにでもボロが出そうなモチーフ”を付与するのも御都合主義の極みだろう。そもそも、教団の“教義”および“裏教義”があまりにもチープで、一般人が容易に引っ掛かるとは思えないのもマイナスだし、老舗旅館がターゲットになる理由も明確ではない。

 終盤には上田監督が満を持して考案したと思われるドンデン返しが用意されているが、そこまでの御膳立てが万全では無いのでインパクトは小さい。前作では効果的だったギャグも、今回は不発だ。主演の大澤数人をはじめ、オーディションで選んだキャストは馴染みが無いが(かろうじて知っているのは北浦愛と小川未祐ぐらい)、みんな的確には仕事をこなしている。それだけにシナリオの不出来は痛かった。上田監督には捲土重来を期待したい。

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