「野蛮人のように」
85年作品。封切り時は正月映画の目玉として公開され、事実それなりの興行成績を上げたのだが、実はそれは併映の那須博之監督の「ビー・バップ・ハイスクール」のおかげである。当時テレビで興行評論家の黒井和夫が“7対3の割合で「ビー・バップ~」が引っ張っている”と言っていたらしいが、観客の反応を見ていればそれは明白だった。とにかく何とも形容しようのないシャシンで、評価出来る余地はない。...
View Article「香川1区」
面白く観た。ドキュメンタリー映画の快作「なぜ君は総理大臣になれないのか」(2020年)の“続編”で、前回が“主人公”である小川淳也衆議院議員の人物像を追った作品であったのに対し、今作は選挙戦そのものを題材にしている。選挙自体がひとつのドラマであるから、この映画も当然ドラマティックな“筋書き”になるが、作者はそこを開き直って勧善懲悪のストーリーに仕立て上げている。その割り切り方が天晴れだ。...
View Article最近購入したCD(その40)。
英国の世界的シンガーソングライターであるエド・シーランが、2021年秋に発表した4枚目のアルバム「=(イコールズ)」はすでに好セールスを達成しており、ここであえて紹介する必要は無いとは思ったのだが、あまりのクォリティの高さに言及せずにはいられなかった。とにかく“捨て曲”が存在せず、どのナンバーも濃密な魅力を放っている。...
View Article「前科者」
同じく“前科者の更生”をテーマにした西川美和監督の「すばらしき世界」(2021年)に比べると、随分と落ちる内容だ。題材に対するリサーチが甘く、キャラクター設定は不自然で、筋書きは説得力を欠く。何でも、TVドラマ版が前年放映されたとのことで、詳しいことを知りたければそっちの方を見ろということなのか。だとすれば不親切極まりない話である。...
View Article「真夜中乙女戦争」
いわゆる“中二病”が炸裂しているような映画で(笑)、酷評も目立つのだが、個人的には気に入った。いくらドラマが絵空事でも、上質のエクステリアと力づくの演出、そして魅力的なキャストさえ用意できれば、かなりの訴求力を獲得するものなのだ。もちろん、成功例は多くはないが、本作はそれがサマになっている稀有なケースである。...
View Article「BeRLiN」
95年作品。映画としての質は評価するに値しないレベルだが、製作された頃の時代の雰囲気とヒロイン役の女優の魅力により、何とか記憶に残っている作品だ。また、印象的なセリフがあり、それだけでも存在価値はあるだろう。監督の利重剛は、なぜか本作で95年度日本映画監督協会新人賞を受賞しているが、これも“時代の空気”のなせる技だと思う。...
View Article「恐怖分子」
(英題:The Terrorizers )86年作品。今は亡き台湾の名匠エドワード・ヤンの初期作品にして代表作。映画全体を覆う緊張感と、ヒリヒリするような人物描写、そしてドラマティックな展開により、観る者を瞠目せしめる一編に仕上がっている。また、扱われるテーマは現時点でもまったく色あせず、むしろ深刻度は高くなっているように思う。...
View Article「ゴーストバスターズ アフターライフ」
(原題:GHOSTBUSTERS:AFTERLIFE)正直言ってあまり期待はしていなかったのだが、実際観てみると面白い。84年の第一作と89年のパート2、そして2016年のリブート版と比べても、クォリティは上だ。以前の作品群が単なる大味なドタバタ劇に過ぎなかったのに対し、本作は主題に一本芯が通っている。やはりこれは、脚本の妙に尽きる。...
View Article「黒猫・白猫」
(英題:Black Cat, White Cat)98年セルビア(当時はユーゴスラビア連邦)作品。鬼才エミール・クストリッツァ監督の持ち味が炸裂している一編。まあ、カタギの映画ファン(?)にはなかなか受け入れられないシャシンではあるが、この作風を承知した上で接してみれば、けっこう心地良い。なお、クストリッツァは本作で第55回ヴェネツィア国際映画祭において最優秀監督賞を獲得している。...
View Article「声もなく」
(原題:VOICE OF SILENCE)食い足りない部分も目立つ韓国製サスペンス劇だが、国情を上手く表現しているし、各キャラクターも“立って”いる。そして、これが第一作目の新人監督の作品にしては大きな破綻もなく、ストレスなく楽しめるのは評価して良いだろう。2021年の第41回青龍賞で主演男優賞と新人監督賞を受賞している。...
View Article「ユメノ銀河」
97年作品。70年代後半にデビューしてから主にバイオレンス物を手掛けたことから、武闘派(?)と思われていた石井聰亙(現:石井岳龍)監督だが、90年代からは静謐でスタイリッシュな作風を露わにしていく。本作もその傾向にある一編で、特にモノクロのアーティスティックな映像と凝った大道具・小道具により、文芸物としての佇まいも感じさせる。一般受けはしないが、これはこれで存在価値のあるシャシンだ。...
View Article「ブルー・バイユー」
(原題:BLUE BAYOU)幾分展開に納得できない部分はあるが、問題提起は評価して良いしキャストの仕事ぶりも万全。演出リズムは及第点で、鑑賞後の満足度は高い。何より、映画で描かれているような事実を知ることは有意義だと思う。第74回カンヌ国際映画祭における「ある視点」部門の出品作である。...
View Article「シャロウ・グレイブ」
(原題:Shallow Grave )94年イギリス作品。ダニー・ボイル監督の長編映画デビュー作で、ヒッチコック作品を思わせるような内容と、独特の演出リズムが印象付けられる一本。ただし、出来の方はそれほど高く評価するようなものではなく、作り手の気負った態度が垣間見える。まあ、今は著名な演出家であるダニー・ボイルのフィルモグラフィをチェックする上での“資料的な”意味合いはあるだろう。...
View Article「ウエスト・サイド・ストーリー」
(原題:WEST SIDE STORY )本作の評価の分かれ目は、言うまでもなく現時点で製作された意義である。前回、このミュージカルがジェローム・ロビンズとロバート・ワイズによって映画化されたのは61年だ。そして映画の時代設定は1950年代後半である。当時のアメリカは景気は良かったが、一方では公民権運動が巻き起こって人種問題がクローズアップされてきた時期だ。...
View Article「青い凧」
(原題:藍風箏)93年中国作品。第二次大戦後からいわゆる文化大革命までの中国の体制を批判する映画は少なくないが、本作は最も直裁的な描写を敢行している。そのためか中国では上映禁止となり、田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)監督は10年間映画撮影を禁じられた。映画の出来としては高いレベルにあり、第6回東京国際映画祭でグランプリを受賞している。...
View Article堤未果「デジタル・ファシズム」
サブタイトルに「日本の資産と主権が消える」とあるように、本来は生活や仕事の質的向上に貢献するはずの各種デジタルデバイスが、個人情報の不当な集約と悪用に繋がり、最終的には一種のファシズムを喚起することを説く一冊。著者の堤はリベラル系ジャーナリストのばばこういちの娘であり、国際情勢等に関する書物で実績をあげた気鋭のライター。なお、彼女の夫は参議院議員の川田龍平である。...
View Article