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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「パーフェクト・ケア」

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 (原題:I CARE A LOT)これはつまらない。設定こそ目新しさはあるが、果たしてこれがリアリズムに準拠しているのかどうか不明。出てくるキャラクターは誰もがウソ臭いし、そもそも皆魅力が無い。ストーリー展開に至っては生温くて話にならず、鑑賞中は何度も中途退出しようと思ったほど。この程度のシャシンが本国では評価され、主演女優が第78回ゴールデングローブ賞の主演女優賞を獲得しているのだから、呆れてしまう。

 ボストン近郊で法定後見人の仕事をするマーラ・グレイソンは、高齢者に対するケアで実績を上げ、裁判所からの信頼も厚い。ところが彼女は裏で医師や怪しげな介護施設とグルになって、身寄りの無い年寄りから財産を搾り取るという超悪質な人物だった。そんな彼女が次のターゲットに定めたのが、親族のいない資産家の老女ジェニファーだった。



 まんまと医者にニセの診断書を書かせてジェニファーを施設に放り込むことに成功したマーラだったが、それから彼女の周りに怪しげな連中がうろつくようになる。実はジェニファーの息子はロシアン・マフィアのボスで、身寄りが無いという経歴はすべて偽装されたものだった。こうしてジェニファーの身柄をめぐって、マーラとマフィアとのつばぜり合いが展開する。

 いくらアメリカの福祉政策がいい加減だといっても、果たしてマーラがおこなっているような詐欺行為が罷り通るものか、甚だ疑問だ。もっとも、日本にも生活保護ビジネスなんてのがあるが、あれは実に反社会的行為ながら仕組みは分かる。対して、本作に描かれたような手口は(たとえ実在するとしても)現実感を欠く。

 また、マーラの造形が薄っぺらで悪女としての凄みが無い。彼女は仕事仲間のフランと同性愛関係にあるのだが、セクシャル度はほぼゼロだ。そして最大の敗因が、マフィア側の出方が稚拙なこと。いつからロシアン・マフィアはこんな手ぬるい仕事に終始するようになったのだろうか。事故や自殺に見せかけて始末するなど、甘い。これがシシリアン・マフィアやメキシコの麻薬カルテルだったら、問答無用でマーラたちをバラバラにしてブタのエサにしていたところだ。

 さらに、マーラが人間離れした“体術”を見せるに及び、完全に観る気が失せた。取って付けたようなラストも噴飯ものだ。ジョナサン・ブレイクソンの演出はテンポが悪く、ブラックなギャグも上滑りしている。主演のロザムンド・パイクをはじめ、ピーター・ディンクレイジ、エイザ・ゴンザレス、クリス・メッシーナ、そしてダイアン・ウィーストといったキャストはいずれも精彩を欠く。マーク・カンハムの音楽も印象に残らない。

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