「ぼくのお日さま」
第77回カンヌ国際映画祭の“ある視点”部門に出品されたのをはじめ、国内外での評価が高い作品だが、個人的にはどこが面白いのかよく分からない。有り体に言ってしまえば、これは素人の映画だ。監督は現時点でまだ20歳代で、この時期から分不相応な扱いを受けてしまえば本人のためにはならないのではと、勝手なことを思ってしまった。...
View Article「武道実務官」
(英題:OFFICER BLACK BELT)2024年9月よりNetflixから配信された韓国製のアクション編。一見、単純な勧善懲悪の図式を取っているシャシンのようだが、けっこう興味深いモチーフが採用されていて最後まで退屈せず向き合うことができた。また、主人公をはじめ各登場人物のキャラも立っていて、そのおかげで多少の作劇のアラも黙認可能だ(笑)。...
View Article最近購入したCD(その44)。
この若さ(2001年生まれ)で既にアカデミー主題歌賞を2度も獲得し、過去2枚のアルバムはいずれも全米1位という、Z世代の寵児であるビリー・アイリッシュのサードアルバム「ヒット・ミー・ハード・アンド・ソフト」は、おそらく今年度の洋楽シーンを代表する名盤になると思う。そう感じさせるだけのクォリティの高さが本作にはある。...
View Article「エイリアン:ロムルス」
(原題:ALIEN: ROMULUS)不満な点はけっこうあるのだが、捨てがたいモチーフもあり、結論としては“まあまあ観られる出来”ではないかと思う。少なくとも、デイヴィッド・フィンチャー監督によるパート3(92年)やシリーズ前日譚になるリドリー・スコット監督の「プロメテウス」(2012年)なんかよりはずっとマシだ。...
View Article「ぼくが生きてる、ふたつの世界」
間違いなく日本映画界における主要な女性監督の一人である呉美保の、なんと9年ぶりの作品だ。この長いブランクの背景はよく分からないが(9年前に結婚したことが関係しているのかもしれない)、久々に映画を撮ってくれたことは喜ばしい。本作のクォリティも低くはないレベルであり、今年度の邦画の中でも記憶に残る内容だ。...
View Article「プロジェクトX-トラクション」
(原題:狂怒沙暴 HIDDEN STRIKE)2023年アメリカ=中国合作。ジャッキー・チェン主演のアクション大作で、撮影は2018年に完了していたらしいが、“諸般の事情”によってアラブ首長国連邦など一部の国を除き劇場公開されていない。代わりに2023年7月からNetflixが配信を開始しており、それをチェックした次第だ。...
View Article「Cloud クラウド」
どうしても評価すべき点が見つからない、困った映画だ。しかし、こんなシャシンがヴェネツィアや釜山などの国際映画祭に出品され、さらに第97回米アカデミー賞の国際長編映画賞日本代表に選定されたというのだから、呆れるしかない。この業界には我々カタギの一般人があずかり知らぬ“事情”というものが存在するのだろう。...
View Article「サウンド・オブ・フリーダム」
(原題:SOUND OF FREEDOM)かなり重要な題材を扱っており、鑑賞後の手応えは高レベルだ。描かれるのは児童人身売買の様態、および闇組織と当局側との死闘などだが、これらが実話を元にしているというのだから驚くしかない。世界の理不尽さに晒されるのは無辜の市民だというのは理解しているが、抵抗する術も持たない年少者が犠牲になる事実を突き付けられると慄然とするばかりだ。...
View Article「F2グランプリ」
84年東宝作品。いわゆる“F1ブーム”が日本で巻き起こったのは80年代後半だとされているが、この映画はそれを先取りした形であるのが興味深い。もっとも、題材になっているのはF1ではなく全日本F2選手権(現在のスーパーフォーミュラに相当)なのだが、それでも邦画では珍しいカーレースを扱ったというだけでも存在価値はあるだろう。とはいえ、出来映えがあまり伴っていないのは残念ではある。...
View Article「HAPPYEND」
いかにも新人監督が手掛けた“意識高い系”の佇まいの映画で、頭から否定してしまう鑑賞者も少なくないとは思うが、個人的には気に入った。登場人物たちが抱える屈託や焦燥感、そして向こう見ずな行動に走ってしまう様子に、昔自分が十代だった頃の捨て鉢な思考パターンが被ってきて何とも言えない感慨を抱いてしまう。こういうアプローチもあって良い。...
View Articleカート・ヴォネガット・ジュニア「タイタンの妖女」
出版は1959年。奇天烈な内容のSF作品で読んだ後は面食らったが、これはジョージ・ロイ・ヒル監督による怪作「スローターハウス5」(72年)の原作者が手掛けた本だということを知り、取り敢えずは納得してしまった。つまりは“考えるな、感じろ”という性格の書物なのだろう。とはいえ中身には幾ばくかのペーソスが挿入されており、読者を置いてけぼりにしないだけの工夫は施されていると思った。...
View Article「シビル・ウォー アメリカ最後の日」
(原題:CIVIL WAR )たぶん、本年度のアメリカ映画では最も重要な作品になるだろう。また、広範囲にアピール出来るような普遍性も兼ね備えている。いまだに世界各地で起こっている戦争の実相を、アメリカの内戦という“架空の設定”を借りて鮮烈に描き出す。そこには大義も名誉も無く、単なる命の奪い合いがあるだけだ。ここまで振り切った捉え方に接すると、まさに絶句するしかない。...
View Article「西湖畔に生きる」
(原題:草木人間 DWELLING BY THE WEST LAKE)監督のグー・シャオガンが前に撮った「春江水暖 しゅんこうすいだん」(2019年)に比べれば、少しはマシな出来映え。ならば面白いのかというと、そうではない。ハッキリ言って、この映画が前作に対して優れている点というのは、尺が短いことだけなのだ(「春江水暖」は150分だったが、本作は115分)。その分、時間の節約にはなる。...
View Article「ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー」
2023年作品。前作(2021年)は観たものの、この続編は個人的鑑賞予定リスト(?)に入っていなかった。しかし、主演の一人である高石あかりがNHK朝ドラの2025年度後期番組の主役にオーディションで選ばれたとのことで、もう一度彼女のことをチェックしようと思った次第。映画の出来には大して期待はしていなかったが、最後まで退屈しないだけのヴォルテージはキープしている。まあ観ても損はしないだろう。...
View Article「若き見知らぬ者たち」
快作「佐々木、イン、マイマイン」(2020年)の内山拓也監督の新作ということで期待したが、とても評価出来る内容ではなく、落胆した。脚本も内山が手掛けているが、プロデュース側はこの万全とは言えない筋書きを修正するようにアドバイスしなかったのだろうか。とにかく、斯様な不完全な建て付けで製作にゴーサインが出たこと自体、釈然としない。...
View Article「トラブル・バスター」
(原題:STRUL )2024年10月よりNetflixから配信されたスウェーデン製のサスペンス編。面白い。何より筋書きがよく練られている。ヒッチコック映画でもお馴染みの“追われながら、真犯人を突き止める話”という普遍性の高い基本線をキッチリとキープしつつ、散りばめられたネタを上手い具合に回収。キャラクター設定も申し分ない。観る価値はある。...
View Article「ミステリと言う勿れ」
2023年作品。公開時には大ヒットで、その年の興収ベストテンにもランクインしている。私はわざわざ映画館まで足を運んで観る気はまったく無かったのだが、配信のリストに入っているのに最近気付き、どんなものかと思いチェックしてみた。結果としては“この程度のシャシンが一番客を呼べるのだろうな”という印象しか持てない。つまりは若者向けで、有り体に言えば超ライト級である。...
View Article「2度目のはなればなれ」
(原題:THE GREAT ESCAPER )本作に“欠点”があるとしたら、それはこの邦題だろう。まるで通俗的メロドラマかラブコメみたいなタイトルで、普通ならば鑑賞対象にはならなかったはずだ。しかし、何の気なしにストーリー設定とキャストをチェックしてみたら、これはとても見逃せない内容であることが窺われた。まったくもって、我が国の配給会社にはセンスが足りていない(まあ、昔からそうなんだけどね...
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