(原題:CIVIL WAR )たぶん、本年度のアメリカ映画では最も重要な作品になるだろう。また、広範囲にアピール出来るような普遍性も兼ね備えている。いまだに世界各地で起こっている戦争の実相を、アメリカの内戦という“架空の設定”を借りて鮮烈に描き出す。そこには大義も名誉も無く、単なる命の奪い合いがあるだけだ。ここまで振り切った捉え方に接すると、まさに絶句するしかない。
近未来のアメリカで、テキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる“西部勢力”と政府軍との間で紛争が勃発する。各地で激しい武力衝突が展開し、戦況は連邦政府が劣勢のようだが大統領は強気な姿勢を崩さない。戦場カメラマンのリー・スミスら4人のジャーナリストは、1年以上もマスコミの取材を受けない大統領に単独インタビューを敢行するため、ニューヨークからホワイトハウスを目指す。それは地獄のような行程であった。
映画は“西部勢力”が連邦から離脱した背景には多くは言及しない。周辺諸国の状況も分からないし、中露や中東方面がどんなスタンスを取っているのかも不明だ。しかし、そんな説明不足とも思える御膳立ては、この映画の存在感を減じる結果には繋がらない。戦争はすでに目の前に存在しているのであり、その不条理にどう向き合うかを問うているのだと思う。
ジャーナリストたちは何とかこの惨劇の裏にあるものを探ろうとするが、それらは徒労に終わるだけだ。結局、彼らは即物的にカメラを構えるだけで、現実を追認するだけの存在に成り下がっている。そんなルーティンワークは、たとえ仲間が殉職しようとも途切れることは無い。
終盤近くの戦闘シーンはかなり迫真性がある。戦時国際法も国際人道法もどこかに追いやられ、目の前に現われる人間をただ殺していくという、その単純かつ残虐な方法論が罷り通るだけ。本作は明らかに巷間言われている“アメリカ社会の分断”をヒントに製作されていることは明らかだ。しかし、そんな分断なんか世界中どこにでも散見されるわけで、この惨状はいわば“万国共通”のものなのだ。
脚本も担当したアレックス・ガーランドの演出は実に粘り強く、ドラマが弛緩することは無い。また、彼がアメリカ国民ではなくイギリス人であるというのも嫌らしい。対象をシニカルかつ冷徹に料理するのは、まさに英国人の所業である(注:これはホメているのだ ^^;)。リー役のキルスティン・ダンストをはじめ、ヴァグネル・モウラ、スティーヴン・ヘンダーソン、ソノヤ・ミズノ、ニック・オファーマンといったキャストは派手さは無いが、それが却ってリアリティを喚起している。
また、最近出番が多い若手のケイリー・スピーニーと、ダンストの夫で特別出演のジェシー・プレモンスが特に印象的。なお、この映画はA24の製作だ。観る前はシンプルな戦争アクション物かと思っていたら、冒頭タイトルにこの映画会社の名称を目にした途端、鑑賞する姿勢を糺してしまった。出来不出来はあるにせよ、このプロダクションの仕事には一目を置くべきだ。
近未来のアメリカで、テキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる“西部勢力”と政府軍との間で紛争が勃発する。各地で激しい武力衝突が展開し、戦況は連邦政府が劣勢のようだが大統領は強気な姿勢を崩さない。戦場カメラマンのリー・スミスら4人のジャーナリストは、1年以上もマスコミの取材を受けない大統領に単独インタビューを敢行するため、ニューヨークからホワイトハウスを目指す。それは地獄のような行程であった。
映画は“西部勢力”が連邦から離脱した背景には多くは言及しない。周辺諸国の状況も分からないし、中露や中東方面がどんなスタンスを取っているのかも不明だ。しかし、そんな説明不足とも思える御膳立ては、この映画の存在感を減じる結果には繋がらない。戦争はすでに目の前に存在しているのであり、その不条理にどう向き合うかを問うているのだと思う。
ジャーナリストたちは何とかこの惨劇の裏にあるものを探ろうとするが、それらは徒労に終わるだけだ。結局、彼らは即物的にカメラを構えるだけで、現実を追認するだけの存在に成り下がっている。そんなルーティンワークは、たとえ仲間が殉職しようとも途切れることは無い。
終盤近くの戦闘シーンはかなり迫真性がある。戦時国際法も国際人道法もどこかに追いやられ、目の前に現われる人間をただ殺していくという、その単純かつ残虐な方法論が罷り通るだけ。本作は明らかに巷間言われている“アメリカ社会の分断”をヒントに製作されていることは明らかだ。しかし、そんな分断なんか世界中どこにでも散見されるわけで、この惨状はいわば“万国共通”のものなのだ。
脚本も担当したアレックス・ガーランドの演出は実に粘り強く、ドラマが弛緩することは無い。また、彼がアメリカ国民ではなくイギリス人であるというのも嫌らしい。対象をシニカルかつ冷徹に料理するのは、まさに英国人の所業である(注:これはホメているのだ ^^;)。リー役のキルスティン・ダンストをはじめ、ヴァグネル・モウラ、スティーヴン・ヘンダーソン、ソノヤ・ミズノ、ニック・オファーマンといったキャストは派手さは無いが、それが却ってリアリティを喚起している。
また、最近出番が多い若手のケイリー・スピーニーと、ダンストの夫で特別出演のジェシー・プレモンスが特に印象的。なお、この映画はA24の製作だ。観る前はシンプルな戦争アクション物かと思っていたら、冒頭タイトルにこの映画会社の名称を目にした途端、鑑賞する姿勢を糺してしまった。出来不出来はあるにせよ、このプロダクションの仕事には一目を置くべきだ。