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Channel: 元・副会長のCinema Days
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オーディオ機器開発における大企業の優位性。

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 先日、PanasonicのオーディオブランドであるTechnicsの新製品の試聴会に行ってみた。とはいっても、展示されていた機器は今年(2017年)春に開催されたハイエンド・オーディオフェアの会場に並べられていたものとほぼ一緒である。ただ、今回は試聴時間が長く設定され、メーカーのスタッフからの話もじっくりと聞くことが出来た。結果的には足を運ぶ価値のある催し物であったと思う。

 スピーカーのSB-G90は発売されてから間が無く、オーディオフェアで聴いた時ほどではないが、まだ音が硬い。必要なエージング(鳴らし込み)の期間は機種によって違うが、半年から1年以上も掛かるケースがある。時間の経過を待って機会があれば再度試聴したい。ただし、今回興味を惹かれたのは、音ではなく本機の構造の方だ。



 通常、スピーカーの各ユニットは前面(バッフル)に装着されているが、SB-G90は筐体内部にサブバッフルが設けられ、すべてのユニットはこのサブバッフルに取り付けられている(したがって、前面バッフルと各ユニットは接触していないという)。内部のバッフルにユニットを取り付けることによって各ユニットの重心位置で筐体に固定されることになり、より効率的なユニットの動作が見込まれ、同時に余計な振動の発生が抑えられるらしい。

 はっきり言って、これは実に凝った構造だと思う。しかも、各ユニットはすべて自社製だ。この仕様がハイエンド機器ではなく定価50万円ほどの中堅モデルに採用されているというのは、凄いことである。

 オーディオフェアでも接することが出来たレコードプレーヤーのSL-1200Gに関しても、その部材を紹介してくれたが、こちらの方もかなりのものだ。ターンテーブルは真鍮とアルミダイキャストによる3層構造。持った感じはズッシリと重い。トーンアームは特注の軽量マグネシウム製である。定価は33万円ながら、物量とテクノロジーは十分に投入されている。



 このような製品の定格や構造を見てみると、やはり大手メーカーの優位性を感じざるを得ない。その昔、同社がダイレクトドライブ方式のターンテーブルを世界で初めて開発したことは知られているが、そのような業績はオーディオ専門メーカーでは難しい。資本力も設備も整っている大企業でしか出来ないことだと思う。その意味で、2015年に“復活”を果たしたこのブランドがコンスタントに製品を投入していることは、業界全体にとって望ましいことだと思う。

 なお、今回の試聴会ではカートリッジはPhasemationの製品が使われていたが、かつてはTechnicsもかなりの数のカートリッジをリリースしていた。またトーンアームも専門メーカーに負けないものを作っていたものだ。アナログレコードの復権がクローズアップされる昨今、願わくばアナログ周辺の機器も充実させて欲しいと思う。

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