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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「メッセージ」

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 (原題:ARRIVAL )タコ型宇宙人が出てきた時点で、早々に観る気が失せた。そもそも、どうしてタコ型なのか。どんなにスゴい科学力を持っていようと、しょせんタコはタコじゃないか。大昔のモンスター映画に出てきそうなクリーチャーでしかなく、こんなのに高踏的な線を狙った(ように思われる)本作のキーパーソン(?)を担わせようとする、その姿勢からして噴飯物である。

 湖畔の家に独りで住む言語学者のルイーズ・バンクスは、若くして世を去った娘ハンナのことを思い出さない日はない。ある日、巨大な宇宙船のような物体が世界12か所に同時に出現する。軍当局は、その物体の“乗組員”とのコミュニケーションを図るためルイーズに協力を要請。米陸軍のウェバー大佐が率いるチームに編入された彼女は、物理学者のイアンと共にエイリアンとの接触を試み、ついに相手の言語体系のアウトラインを掴むことに成功する。ところが、しびれを切らした中国当局は核攻撃を決定。エイリアン達に侵略などの意図が無いことを知ったルイーズらは、中国の武力行使を阻止するために奔走する。

 タコ星人が地球にやってきた目的が、分かったようでよく分からない。彼らの“時間”の概念は地球人のそれとは大きく違うらしく、過去も未来も同じレベルで見通せるのだという。3千年後に、タコ星人が人類にお世話になる時がやってくるとのことで、その日のために“知恵”あるいは“武器”を授けに来たらしい。

 だが、過去も未来も自在に見渡せるような力がありながら、どうして現時点で地球に来たのかイマイチ理解できない。未来に起きるトラブルぐらい自前で何とかなりそうだと思うのだが、肝心の“3千年後の出来事”の概要も示されていないのだから、閉口するしかない。

 さらに、この時間軸のランダムアクセスというのはルイーズ自身にもコミットする話で、終盤には意外な展開を見せるのだが、タイムパラドックスに対する配慮が全く成されていない。それどころか、ルイーズが事態を好転させるために取った行動の数々も、随分と無理筋である。斯様な非合理的モチーフを積み上げて、揺れ動くヒロインの心情を描き出しているから感動しなさいと言われても、そうはいかないのだ。

 ドゥニ・ヴィルヌーヴの演出は粘着質だが、大局が見えていない感じだ。主演のエイミー・アダムスをはじめジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカーといった面々も、予想通りのパフォーマンスを披露するのみで意外性が無い。ただし、ヨハン・ヨハンソンの音楽は良かったし、それを盛り上げる音響効果は素晴らしかった(アカデミー賞受賞)。おそらくは今後、高級AVシステムのデモ用のソフトとして多用されることだろう。

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