全く期待していなかったが、意外や意外の面白さだった。理由はいろいろあるだろうが、一番の勝因はチャラチャラした色恋沙汰(のようなもの)がほとんどクローズアップされておらず、全編これ“オトコの映画”に徹していることだろう。もちろん、野郎ばかり出していれば内容は保証されるというわけではないが、本作には必然性と確固とした技巧が存在している。観る価値はある快作だ。
私立の男子校である海帝高校は、飛び抜けた秀才たちが集まる全国屈指の名門だ。政財界に強力なコネを持つこの学校で生徒会長を務めた者には、有名大学への推薦はもちろん、将来の政治家への道が確約されている。事務次官の息子である赤場帝一は主席入学を果たすが、いずれは総理大臣になって自分の国を作るという野望を持っていた。その第一歩として、何としてでも生徒会長の座を得なければならない。
帝一はその年の生徒会長選挙で候補になっている3人の2年生のうち、まずは最有力とされる氷室に取り入ろうとする。しかし、強引なやり方で顰蹙を買うようになった氷室に早くも愛想を尽かした帝一は、あっさりと2番人気の森園に鞍替えする。そんな中、奨学生の枠で入学してきた大鷹は人望が厚く、彼の動向が選挙の帰趨を決することなると察した帝一は気が気でない。古屋兎丸の同名コミック(私は未読)の映画化だ。
キャストの大仰な演技とケレン味たっぷりの展開はヘタすると作劇を空中分解させるが、ここではそうならない。それは、物語の根幹が(普遍性の高い)政治的パワープレイをトレースしているからだ。力で押し通そうとする者、理想を掲げる者、権謀術数を駆使しようとする者、一歩引いて情勢を見極めようとする者etc.現実の政治の世界でも存在しそうなキャラクターを配し、いかにも“あり得そうな”言動を披露させることにより、ストーリーにリアリティを持たせている。
もちろんここで言うリアリティとは普通の学園生活のそれではなく、野心を持った人間達の生態という次元における現実感である。また、単なる露悪趣味ではなく、若者の成長を描く青春映画の側面もしっかりとキープしているのがアッパレだ。もっとも、終盤における帝一の“成長”とはフィクサーとしてのあり方を模索するという極めてインモラルなものなのだが、その生き方も肯定していることにも感心する。
永井聡の演出はノリが良く、最後まで飽きさせない。主演の菅田将暉は絶好調で、バイタリティの塊のような主人公像を上手く表現している。野村周平や竹内涼真、間宮祥太朗、志尊淳、千葉雄大といった他の若手の面子も実に達者だ。吉田鋼太郎や榎木孝明などのベテラン陣も影が薄くなりそうである。ヒロイン役の永野芽郁にさほど魅力が無いのは残念だが、あまり目立ちすぎると“オトコの映画”としてのスタイルが揺らいでくるので、これで良いのかもしれない(笑)。