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Channel: 元・副会長のCinema Days
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カセットテープの復権。

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 アナログレコードが見直されていることは以前述べたが、何と最近ではカセットテープの人気も再燃しつつあるらしい。カセットテープが今も製造・販売されていることは知ってはいたが、それはかつての音楽ファンによる懐古趣味や、高年齢層のカラオケ練習用としての存在価値しか無いと思っていた。ところが、昨今カセットテープに興味を持っているのは若年層だという。

 ビームス・レコーズやHMVはアナログレコードと共にカセットテープを積極的に取り扱い、それなりのセールスを上げているとか。ユニコーンや大貫妙子、海外ではジャスティン・ビーバーやカニエ・ウェストなど、カセット作品をリリースするミュージシャンもいる。てっきり“消えゆくメディア”だと思っていたカセットテープだが、今もしっかり命脈を保っているようだ。



 再評価されている理由は何かというと、各関係サイトにも書いてあるように、まず“モノとしての存在感”に尽きるのだろう。ダウンロード音源のような“データのみ”のソースは、やはり所有することによる満足感は乏しい。カセットテープは扱いは面倒くさいが、その分じっくりと音楽とじっくり向き合える。また音自体も周波数特性は狭いが、独特のローテク感は聴いていてホッとするところがある。テープメディアに付き物のヒスノイズも、一種の“風合い”と捉えれば別に不満も無いということか。

 しかしながら、現在国内でカセットテープを製造・販売しているメーカーは日立マクセルのみ。品目もURとULの2種類だけだ。昔は日本だけでも7,8社がカセットテープを作っており、バラエティに富んだ製品ラインナップを揃えていた。以前は現行のノーマル・ポジション仕様(TypeI)だけではなく、ハイポジション(TypeII)、メタルテープ(TypeIV)の3種類もあったので、モデル数が多かったのは当然かもしれない(どうしてTypeIIIが抜けていいるのか、そのあたりの事情を知る者も今では多くはないだろう)。

 ポジションの違いだけではなく、パッケージに関しても各メーカーは工夫していた。薄型のケースや、ポップな色合いを採用したりと、見ているだけでも楽しかった。もちろん音もメーカーごとに違っていた。そして(ある意味困ったことだが)品質も異なっていた。最もしっかり作られていたのがTDKの製品で、対して一番良くないと(個人的に)思ったのがSONYのモデルだった。



 SONYのカセットテープ(特に80年代前半までの製品)はとにかくトラブルが多かった。テープ自体が劣化するのが早かったし、メカ部分に絡み付くのも珍しいことではなかった。しかし、後年発売されたガイド部分をセラミック製に強化したモデル(HF-Proなど)は音も耐久性も格段に向上し、安心して使えるようになったのは有り難かった。

 テープだけではなく、再生装置(ラジカセやカセットデッキ)に関しても昔はいろいろな製品が出ていたが、これに関してはまた機会を改めて言及したい。

 今後このカセットテープの復権のトレンドがいつまで続くのか(あるいは、定着化するのか)分からないが、音楽鑑賞という趣味においては(ダウンロード音源などの)簡便性ばかりが取り沙汰されるものではないことは確かなのだろう。メディア製造元や機器メーカーとしても、ユーザーの真のニーズを把握した商品展開をして欲しいものだ(お仕着せの“ハイレゾ音源ブーム”なんかは敬遠したい)。

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