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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ケアフル」

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 (原題:CAREFUL )92年カナダ作品。日本未公開で、私は第5回の東京国際映画祭で観ている。監督のガイ・マディンは「ギムリ・ホスピタル」(88年)や「アークエンジェル」(90年)を手掛けているが(どちらも未見)、主に短編映画の分野で活動しているらしい。

 19世紀、アルプス山麓の街トルツバート。ギムナジウムの学生ヨハン(ブレント・ニール)は、幼馴染みの婚約者クララ(サラ・ネヴィル)がいながら、自分の美しい母親に近親相姦的愛情を抱き、そのために精神錯乱になり自殺する。ヨハンの死後、その弟グリゴリス(カイル・マクローチ)がクララを愛するようになるが、クララもまた自分の父親に近親相姦的愛情を抱いていたことが発覚する。



 ・・・・というようにプログラムからストーリーを引用してしまったが、物語自体はこの映画に関してあまり意味を持たないように思う。ハッキリ言ってこの作品は今まで私が観てきた映画のどれとも違う。誰も真似ができない独特の雰囲気とユニークすぎる映像処理は観る者を仰天させずにはいられない。

 すべてスタジオ撮影。シェイクスピアかギリシア悲劇のパロディみたいなドラマ。サイレント映画の手法の大胆な導入。画面の切り替え(フェイドイン・フェイドアウトの多用、強引なワイプ処理)はもとより、字幕だけの画面が多く挿入され、弁士のようなナレーションも入る。そして何よりわざとフィルムの粒子を荒くしたようなタッチが目を引く。

 モノクロ映像に故意にノイズを加え、それにコンピュータ処理で着色したらしいヴィジュアルもユニークだが、サウンドまで画面に併せて“シャーシャー”という大きなヒスノイズが全編鳴りっぱなしなのには、まったく閉口していいのやら感心していいのやら・・・・。登場人物も徹底してマンガ的で、ドラマ運びのタイミングやら語り口はマジメなようでいて、どこか完全にオフビートである。

 笑える場面があるかと思うと、突然残酷なシーンがあったり(それが全然違和感がないのだ)、とにかく、ここで私がくどくど説明するより実際観てもらわなければ、この奇抜さはわからないだろう。“おたく度”においては“全盛期”のティム・バートンをも凌ぐ。私としてはあまり好きではない個性だが、一見の価値はあると思う。

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