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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」

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 (原題:EYE IN THE SKY)ワンシチュエーションの映画だが、練られた筋書きと畳み掛けるような演出により、見応えのあるシャシンに仕上がった。もちろん、取り上げられた題材の重大性も如何なくクローズアップされており、なかなかの力作だと思う。

 イギリス軍の諜報部門のキャサリン・パウエル大佐は、最新鋭のアメリカ軍のドローン・リーパー(MQ-9)偵察攻撃機を使い、米軍と共にテロリスト壊滅作戦を指揮している。彼女はケニアのナイロビに過激派組織アル・シャバブのテロリストが潜伏していることを突き止め、彼らが大規模な自爆テロを決行しようとしていることを察知。国防大臣のフランク・ベンソンにドローン機からの攻撃を要請する。

 これを受けてアメリカ・ネバダ州の米軍基地では、新人のドローン・パイロットのワッツ中尉らがミサイル発射の準備に入った。だがその時、ターゲットであるテロリストの隠れ家の近くに幼い少女がパンを売りに現れる。民間人を巻き込んでしまえば軍当局は批判の矢面に立たされる。しかし、このまま自爆テロが発生するのを放っておけば、多数の犠牲者が出るのは確実。パウエル大佐たちは究極の選択を迫られる。

 シチュエーションはひとつだが、視点は多岐にわたっている。英国諜報部と米軍の様子はもちろん、各閣僚やケニア政府の対応、さらには少女の家族や現地の諜報員など、それぞれの関係者が合理的と思われる行動を取るたびに、事態は混迷の度合いを増していくという、その切迫性の描出には並々ならぬものを感じる。特に、保身と建前で責任回避を図る政治家たちの言動がリアルだ。

 そんな中、パウエル大佐はある“プラン”を提案するが、それは一見最小のダメージに抑えられるものの、深刻な結果を残すことには変わりはない。

 軍や政府の関係者は、現地で情報収集にあたるエージェント以外、遠く離れた会議室やドローン遠隔操縦室に留まっている。メディアによるリアルタイムの報道映像が“テレビゲームのようだ”と表現されたのは湾岸戦争の頃だが、これはもちろん戦地と後方支援組織との距離的・立場的な乖離を揶揄したものであった。しかし、実際にはそれは偽りなのだ。紛争現場であろうと指揮系統の中枢だろうと、戦争の悲惨さはリアルタイムで伝わってくる。本作のやるせない結末が、それをヴィヴィッドに示している。

 ギャヴィン・フッドの演出スタイルは正攻法で、まったく“揺らぎ”がない。これからも作品を追いかけたくなるような力量を持っていると思う。パウエル大佐役のヘレン・ミレンはまさに快演で、有能だが冷酷な職業軍人の実相に鋭く迫っていた。アーロン・ポールやバーカッド・アブディ、ジェレミー・ノーサムといった脇の面子も良い。また、この映画はアラン・リックマンの俳優としての最後の仕事(この後に「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」で声だけの出演あり)になった。実に感慨深い。

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