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長谷川三千子「民主主義とは何なのか」

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 民主主義が絶対的正義であるかのような風潮に真っ向から異を唱えた本(2001年発刊)。哲学の教授でもある作者の長谷川は、小説家・野上弥生子の孫に当たる。

 近代民主主義の原点となった「人権宣言」を生み出したフランス革命において、民主主義の名のもとに地域共同体の破壊と大量粛清が行われた事実を指摘するのを手始めに、いかにデモクラシーが戦争の口実になり一般市民を苦しめ続けてきたかを畳み込むような筆致で論述している。



 特にジョン・ロックを「民主主義に対する思考停止状態を生み出した張本人」と断定する思い切りの良さは、まさに「気合」だ(笑)。戦後民主主義に疑問を持つ読み手からすれば、溜飲の下がる内容であることは間違いない。

 ただし、民主主義とは「ベストの方法」ではないが現時点での「ベターな方法」であることも確かだ。民主主義に潜む僭主制の危険性を駆逐するのは、やはり民主主義でなければならない。長谷川の場合、その担い手を「理性を持った特定の層」だと決めつけているようなフシがあるのは愉快になれない。

 作者の主張を突き詰めれば「単なる保守反動」にも繋がりかねず、そのあたりの詰めが甘いようにも感じられる。

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