(原題:X-MEN:APOCALYPSE)結局“プロフェッサーXがハゲている理由”を説明しているだけの映画だ(大笑)。それ以外は何もない、もう見事にスッカラカンの作品で、このシリーズに特に強い想い入れのある者を別にすれば、観る価値は微塵もないと断言できる。
1983年、終末思想にかぶれたカルト集団のひとつが、古代エジプトで封印されたはずの世界最初のミュータントであるエン・サバー・ヌール(別名アポカリプス)を甦らせてしまう。彼はこの世界を一度“リセット”して、自分に都合のいい状態に作り替えようとする。そのために有力なミュータント4人をスカウトするが、その中に妻子を失ったばかりのマグニートーも含まれていた。一方、危険を察したプロフェッサーXはマグニートーに接触を試みるが、逆にアポカリプス側に誘拐されてしまう。X-MENの精鋭たちはリーダーを奪還すべく敵のアジトに向かい、大々的なバトルが勃発する。
前作「フューチャー&パスト」(2014年)で混乱していた本シリーズの時制が一応修正され、新たなスタートラインに立ったと思ったのだが、性懲りも無く過去の出来事をほじくり出して再び迷走させるとは一体どういう了見か。プロフェッサーXの髪が無くなった過程が、まるまる映画一本費やすほど重大なネタなのだろうか(爆)。まったく、いい加減にして欲しい。
それでも本作がそこそこ面白ければ文句は出ないのだが、これが落第点しか付けられない。だいたい、最強のミュータントという触れ込みで登場するアポカリプスの“能力”が不明である。せいぜい人間を地面や壁にめり込ませることぐらいしか示されないが、この程度では恐るるに足りない。派手な破壊活動はマグニートーが一手に引き受けており、確かにアポカリプスはその切っ掛けを演出したのかもしれないが、どう見たって二線級のキャラだ。
X-MENの他のメンバーも大勢バタバタと出てくる割には統制が取れておらず、各個人が勝手に得意技(?)を出しているうちに何となく話が終わってしまったという、まるで気勢の上がらない展開に終始している。果てはウルヴァリンが意味も無く出てくるに及び、マジメにやる気があるのかと疑いたくなった。
ブライアン・シンガーの演出は相変わらずキレもコクも無い。バトルシーンは段取りが悪く、全く盛り上がらない。ならば視覚効果は凄いのかというと、これが“どこかで観たような映像”ばかりで脱力してしまった。ジェームズ・マカヴォイやマイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンスといった常連の演技は可も無く不可も無し。残りの面子は印象にも残らない。
製作陣はいつまでB・シンガーに監督をやらせるつもりのだろうか。「ファースト・ジェネレーション」(2011年)のマシュー・ヴォーンをはじめ、相応しい人材はいくらでもいると思うのだが・・・・。同じマーヴェル・コミック作品ならば、「アベンジャーズ」一派の方が(いくつか失敗作はあるものの)期待を持たせてくれる。