(原題:THE LEGEND OF TARZAN)こんなに弱いターザンは願い下げだ。わずか4,5人の敵に簡単に取り押さえられ、類人猿とのタイマン勝負では防戦一方で、挙句の果ては悪党の親玉に簡単に背後から迫られてピンチに陥る。子供の頃からジャングルの中で数々の修羅場を潜ってきたはずのタフガイを、かくも頼りなく描いてもらっては困るのだ。ヒーローたるもの、4,5人どころか4,50人ばかり束になって掛かってきても返り討ちにするぐらいの強さがなくてはならない。肝心の主人公の造形からして“この程度”なので、あとは推して知るべしだ。
1885年、アフリカ・コンゴの統治に行き詰ったベルギー国王レオポルド2世は、側近で手練れのネゴシエーターであるレオン・ロムを現地に派遣し、負債の解消のためダイヤモンドを採掘させようとする。ロムは奥地の部族と接触するが、族長は“ターザンと引き換えにダイヤを渡す”という条件を出す。
その頃、ターザンこと英国貴族ジョン・クレイトンの元に、レオポルド2世からのコンゴ視察依頼が届く。コンゴで行われている奴隷的な労働実態を検証したいというアメリカ特使のウィリアムズの申し出もあり、ジョンは妻ジェーンを連れてウィリアムズと共に生まれ育ったアフリカに戻る。ところがロム率いる一味が集落を急襲し、ジェーンが連れ去られてしまう。ジョンとウィリアムズは必死の追跡戦を開始する。
ターザンがアフリカからイギリスに帰って時間が経過した後から始まるので、野生児としての主人公の魅力が出にくくなっている。もちろん、彼の生い立ちやジェーンと知り合った経緯は回想形式で紹介されるのだが、取って付けたような印象しかない。加えて、前述のように今回のターザンはケンカが強くなく、上半身は裸だがいつもキッチリとズボンを着用しているので、いよいよ興ざめだ。
さらに言えばトレードマークであるはずの雄叫びも弱々しく、木から木へと飛び移るシーンは高揚感は皆無。結局、物語に決着をつけるのはターザンの腕っ節ではなく、彼の動物とのコミュニケーション能力だったりする(笑)。
デイヴィッド・イェーツの演出は凡庸極まりなく、一向に盛り上がらない。主演のアレクサンダー・スカルスガルドはイケメンでマッチョながら、救いようのないほどの大根だ。海千山千のサミュエル・L・ジャクソンや「007/スペクター」よりも悪役が板に付いていたクリストフ・ヴァルツなどの面子が脇を支えるが、ドラマの弱体ぶりを挽回するには至らず。良かったのはキツめの美貌が光るジェーン役のマーゴット・ロビーぐらいだ。
関係ないが、筒井康隆の短編小説に「老境のターザン」というのがある。当然のことながら“本家”のパロディなのだが、これがけっこう笑える。誰か映画化してくれないだろうか(爆)。