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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「蘇える金狼」

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 79年作品。角川映画40年記念企画としてリバイバル上映され、今回初めて観ることが出来た。いやはや、それにしても酷い出来である。こんなものが多額の宣伝費をかけて全国拡大公開されていたというのだから、この頃の邦画界というのはマトモではなかったと言うべきであろう(もっとも、それは角川映画に限った話だったのかもしれないが ^^;)。

 大手油脂メーカーの経理課に籍を置く若手サラリーマンの朝倉哲也は、凶悪な“裏の顔”があった。ある日、朝倉は現金移送中の銀行のスタッフを襲い、一人を射殺して1億円を強奪。ところが、その札はナンバーが銀行に登録されていて使えない。彼は横須賀のヤクザに掛け合ってその札を麻薬に替え、それを再び安全な紙幣に替えた。やがて朝倉は、手に入れた麻薬で会社の上司の愛人である永井京子を手なずける。



 一方、会社の不正経理を嗅ぎつけた桜井という男が強請を仕掛けてくる。会社側は朝倉に桜井の始末を依頼するが、事が終わり次第に朝倉自身の抹殺も企んでいた。それを読んでいた朝倉は、会社幹部の弱みを握って逆襲に転じる。大藪春彦の同名の小説(私は未読)の映画化だ。

 とにかく、筋書きが滅茶苦茶である。杜撰な現金強奪作戦を堂々とやってのける厚顔無恥ぶりから始まって、主人公がボクシングジムに通っているという事実を掴んだだけで、いきなり殺しの依頼をする会社幹部が噴飯ものならば、上手く立ち回ったつもりで全く合理的ではない行動を取る桜井にも呆れる。映画の進行と比例するかのように支離滅裂の度合いは幾何級数的に上昇し、ラスト近辺などスタッフが映画作りを放り出したような醜態だ。

 そもそも、朝倉の正体と行動規範がまったく納得いくようには扱われていない。普通の勤め人でありながら銃の扱い方に長けており、人を殺すことを何とも思っていない。それ相応の“経歴”を臭わせる部分があって然るべきだが、その気配は全くない。もちろん、どういう内面を持っているのか皆目分からない。

 監督は村川透だが、撮影時に何か悪いクスリでもキメていたのではないかと思うほどグダグダである。アクションシーンには緊張感・高揚感は皆無。テレビの刑事ドラマにも劣る。こんなつまらない内容の映画に、豪華なキャストが顔を揃えていることには驚かされる。主演の松田優作をはじめ、佐藤慶や成田三樹夫、小池朝雄、草薙幸二郎、岩城滉一、真行寺君枝、千葉真一等々、よくもまあ集めたものだ。だが、全員揃いも揃って精彩を欠く。良かったのは美しさとエロさを全面開示した京子役の吹雪ジュンぐらいだ。

 角川映画はそれまで邦画界に存在しなかったメディア・ミックスを仕掛けて一世を風靡したが、良い作品は数えるほどしか無い。いくらマーケティングを新規に工夫しても、実際に映画を作るのは従来からのスタッフと俳優達であることを失念していたようだ。早晩“限界”に達してしまうのは当然のことだったのだろう。

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