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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「マネーモンスター」

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 (原題:Money Monster )かなり楽しめた。硬派なネタを扱いながらも、中身はしっかりとエンタテインメントの方向に振られている。言い換えれば、奇態な意匠もシリアスな題材によって巧みに“中和”されているということで、このあたりの作者のバランス感覚は大したものだと思った。

 投資アドバイザーでもあるリー・ゲイツが司会を務めるテレビ番組「マネーモンスター」は、彼の胡散臭いトークとハデな演出で人気を博していた。この番組は生放送が売り物なのだが、ある日ディレクターのパティは、放送中に見慣れない男がスタジオ内にいることに気付く。すると男は拳銃を振りかざして突如番組に乱入し、リーを人質に取り、以前番組内でのリーの“アドバイス”通りに投資をしたら全財産を失ったと訴える。株なんてしょせん“水物”で、買って損をしたのは自己責任だと片付けたくなるようなハナシなのだが、今回の株価変動は不自然に過ぎる。やがてリーとパティは、その裏にイレギュラーな株価操作が介在していることに気付く。

 犯罪行為が公衆の面前で展開されるという“劇場型犯罪”を扱った映画は、シドニー・ルメット監督の「狼たちの午後」(75年)をはじめその数は少なくないが、本作はネットワークを介してグローバルに波紋が広がっていく様子を捉えているのが目新しい。

 敵の首魁はワールドワイドに移動中で、その手口をソフトウェアを開発した韓国人プログラマーや、アイスランドのハッカー集団など地球の裏側にいる連中と協力しながら主人公たちが暴こうとするプロセスは、けっこうスリリングだ。しかも、事の発端はアフリカの新興国における国際資本の“搾取”なのだから、まさに舞台は二次元的にどこまでも展開していく。

 リーとパティが乱入男のカイルの相手をしている間に、新たな連帯感が醸成されていくあたりは申し分ない。さらに、カイルのプロフィールは救いようがないが、どこか同情できる点を網羅しているのも見逃せない。

 今回は監督に回ったジョディ・フォスターは、同じく“劇場型犯罪”をネタにした「インサイド・マン」(2006年)にも出演しているが、この方法論を彼女なりに練り上げた様子がうかがえよう。とにかく演出に淀みがなく、ラストまで一気に見せきっている。リーに扮するジョージ・クルーニー、パティ役のジュリア・ロバーツ、共に好演。特にロバーツは個人的に苦手な女優なのだが(笑)、本作ではスクエアーなパフォーマンスに終始していて評価できる。ジャック・オコンネルやドミニク・ウェスト、カイトリオーナ・バルフェといった脇の面子も良い。

 それにしても、先日観た「マネー・ショート 華麗なる大逆転」もそうだが、ハリウッドは経済ネタを娯楽作のモチーフとして昇華するのが上手い。このフレキシビリティが日本映画には欠けている点であると、改めて思う。

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