最近はBlu-specCDやSHM-CD、HQCDなど、従来型CDに比べて高音質を謳った種類のディスクが出回っているが、それらは概ね素材面での違いをアピールしている。だが、マスタリングから原盤製作まですべての工程を追い込んでクォリテイの向上を狙ったCDが以前から存在していた。それが日本ビクターが開発したXRCDである。これはSACDのような特殊規格ではないので、通常のCDプレーヤーでも再生可能だ。
今回紹介するのは、ジャズ・ヴォーカルを中心にした楽曲のコンピレーションをXRCDとして仕上げたBEST AUDIOPHILE VOICESのシリーズ第三巻である。収録されているのはジャネット・サイデルやレベッカ・ピジョン、藤田恵美などのシンガーによる有名曲のカバーで、どれも親しみやすく誰でも楽しめる内容である。
特に音質の良いマスターテープを選んでXRCD仕様で提供しているためか、音はかなり良い。音像の粒立ちや清涼な音場にその特質があらわれていると思う。内容がオムニバスであるため録音状態は楽曲ごとに違うのだが、通して聴いても統一感が失われることがない。選曲と曲順には細心の注意が払われているということだろう。
XRCDはこの他にも何枚か所有しているのだが、どれも音質・内容は満足できるものだ。厚めの紙ジャケットも高級感があって良い。しかし、XRCDは高価だ。一枚が4千円近く、気軽に手を出せるものではない。とはいえ、従来型CDをブラッシュアップすることによってここまでサウンドを練り上げられることを知るだけでも、手にする意義はあると思う。
アン・ヴォーグやTLCなど、女性ヴォーカルによるソウル・グループは以前から多数存在していたが、2005年のデスティニーズ・チャイルドの活動終了により一段落した感があった。しかし、ここにきて久々に大物の風格を漂わせる新人がデビューした。それが女性ヴォーカル3人組のキングである。
2011年にデジタルのみでリリースされた楽曲が業界筋で大評判になり、ケンドリック・ラマーやロバート・グラスパーのプロジェクトに参加。プリンスの前座をつとめたりエリカ・バドゥから賛辞を送られたりと、その実力は早くから知れ渡り、今回自らプロデュースも手掛けたデビュー・アルバム「ウィー・アー・キング」を満を持してリリースした。
とにかく、各楽曲のレベルが恐ろしく高い。キャッチーなフレーズを抑えた浮遊的なグルーヴが全編にわたって展開されるが、メロディ・ラインやアレンジは細部に至るまで考え抜かれている。EDMの要素は取り入れられているものの、決して金属的にはならず温度感を伴ったサウンド世界を現出。精緻なハーモニーはリスナーを包み込むように迫ってくる。
また、録音が上質であるのも特筆して良いだろう。彼女たちはヴォーカルだけではなく楽器演奏も達者だというから、ライヴでも盛り上がるかもしれない。最先端のソウルミュージックをチェックする意味でも、聴き逃せないアルバムだと思う。
数多く存在するエレクトロポップ・バンドの中で、最近面白いと思ったものにスコットランドはグラスゴー出身の3人組チャーチズ(CHVCHES)が挙げられる。昨年(2015年)にリリースされたセカンド・アルバムの「エブリ・オープン・アイ」は各ナンバーの仕上がりに差がありすぎた前作に比べ、アルバムとしてのまとまりが出てきていると思う。
曲調はレトロだが、メロディ・ラインがポップで親しみやすく、かつクールで陰影がある。サウンド・デザインは精密で、全体的に厚みがある。たぶん日本のテクノ・バンドなんかよりも“音数”は多いだろう。そもそもオーソドックスなロックをやっていたメンバーが集まっているせいか、軽佻浮薄な展開にならないのが良い。
そして何といってもこのグループの“売り物”は、紅一点ローレン・メイベリーのヴォーカルであろう。透き通るような声質で、実にキュートだ。ちなみに、彼女のルックスはアイドル並に可愛い(笑)。あとの2人は見るからにオッサンであるが、このギャップも面白い。
録音はそれほど上質ではないが、昨今のJ-POPよりは数段聴きやすい。テクノ系や女性ヴォーカルが好きなリスナーならば、手に取って損の無いアルバムだと言える。
今回紹介するのは、ジャズ・ヴォーカルを中心にした楽曲のコンピレーションをXRCDとして仕上げたBEST AUDIOPHILE VOICESのシリーズ第三巻である。収録されているのはジャネット・サイデルやレベッカ・ピジョン、藤田恵美などのシンガーによる有名曲のカバーで、どれも親しみやすく誰でも楽しめる内容である。
特に音質の良いマスターテープを選んでXRCD仕様で提供しているためか、音はかなり良い。音像の粒立ちや清涼な音場にその特質があらわれていると思う。内容がオムニバスであるため録音状態は楽曲ごとに違うのだが、通して聴いても統一感が失われることがない。選曲と曲順には細心の注意が払われているということだろう。
XRCDはこの他にも何枚か所有しているのだが、どれも音質・内容は満足できるものだ。厚めの紙ジャケットも高級感があって良い。しかし、XRCDは高価だ。一枚が4千円近く、気軽に手を出せるものではない。とはいえ、従来型CDをブラッシュアップすることによってここまでサウンドを練り上げられることを知るだけでも、手にする意義はあると思う。
アン・ヴォーグやTLCなど、女性ヴォーカルによるソウル・グループは以前から多数存在していたが、2005年のデスティニーズ・チャイルドの活動終了により一段落した感があった。しかし、ここにきて久々に大物の風格を漂わせる新人がデビューした。それが女性ヴォーカル3人組のキングである。
2011年にデジタルのみでリリースされた楽曲が業界筋で大評判になり、ケンドリック・ラマーやロバート・グラスパーのプロジェクトに参加。プリンスの前座をつとめたりエリカ・バドゥから賛辞を送られたりと、その実力は早くから知れ渡り、今回自らプロデュースも手掛けたデビュー・アルバム「ウィー・アー・キング」を満を持してリリースした。
とにかく、各楽曲のレベルが恐ろしく高い。キャッチーなフレーズを抑えた浮遊的なグルーヴが全編にわたって展開されるが、メロディ・ラインやアレンジは細部に至るまで考え抜かれている。EDMの要素は取り入れられているものの、決して金属的にはならず温度感を伴ったサウンド世界を現出。精緻なハーモニーはリスナーを包み込むように迫ってくる。
また、録音が上質であるのも特筆して良いだろう。彼女たちはヴォーカルだけではなく楽器演奏も達者だというから、ライヴでも盛り上がるかもしれない。最先端のソウルミュージックをチェックする意味でも、聴き逃せないアルバムだと思う。
数多く存在するエレクトロポップ・バンドの中で、最近面白いと思ったものにスコットランドはグラスゴー出身の3人組チャーチズ(CHVCHES)が挙げられる。昨年(2015年)にリリースされたセカンド・アルバムの「エブリ・オープン・アイ」は各ナンバーの仕上がりに差がありすぎた前作に比べ、アルバムとしてのまとまりが出てきていると思う。
曲調はレトロだが、メロディ・ラインがポップで親しみやすく、かつクールで陰影がある。サウンド・デザインは精密で、全体的に厚みがある。たぶん日本のテクノ・バンドなんかよりも“音数”は多いだろう。そもそもオーソドックスなロックをやっていたメンバーが集まっているせいか、軽佻浮薄な展開にならないのが良い。
そして何といってもこのグループの“売り物”は、紅一点ローレン・メイベリーのヴォーカルであろう。透き通るような声質で、実にキュートだ。ちなみに、彼女のルックスはアイドル並に可愛い(笑)。あとの2人は見るからにオッサンであるが、このギャップも面白い。
録音はそれほど上質ではないが、昨今のJ-POPよりは数段聴きやすい。テクノ系や女性ヴォーカルが好きなリスナーならば、手に取って損の無いアルバムだと言える。