(原題:THE COMPANY OF STRANGERS )90年カナダ作品。監督のシンシア・スコットはこれがデビュー作だったという話だが、これ以降劇場用映画を撮ったという話は聞かない。元々ドキュメンタリーの作家であるから、たぶんその方面の仕事はやっているのだと思う。この映画はキャストも同様に馴染みのない名前ばかりが並ぶ。しかし、作品自体はかなりのハイレベルで、これは思いがけない才能だと感じた。
ケベック州のモントレンブラントの森で一台のバスがエンストを起こして立ち往生する。乗客は高齢の女性ばかり7人で、黒人の女運転手ミシェルはエンジンの知識が皆無だ。最高齢のコンスタンスは少女時代にこの森にあるコテージで過ごした思い出があり、彼女たちはそのコテージに向かうが、今では廃墟になっていた。仕方なくその廃屋で共同生活を始めることになった8人だが、次第に彼女たちはそれぞれの特技とキャラクターを生かして役割分担をするようになる。
別にドラマティックな出来事があるわけではない。森の中の廃屋での登場人物たちの暮しをカメラは静かに追うだけである。彼女たちの会話、クセや表情から一人一人が歩んで来た人生を浮き彫りにする。最初は見ず知らずだった彼女たちが、次第に連帯感を深め、年をとったことに対する絶望・諦めなどから解放されていく過程がしみじみと感動的に、しかもユーモラスに綴られる。老人を主人公にした映画ではマーク・ライデル監督の「黄昏」(82年)に匹敵する秀作だと思う。
演技していることを全く感じさせない自然体の出演者たちがいい。会話のシーンがいつの間にか登場人物に対するインタビューのような形になり、若い頃の写真がカットバックで挿入される。平凡な老人に見えても決してその人生は平凡ではない。いや、ドラマティックではない人生なんて本当は存在しないのではないか、という作者の主張が伝わってくる。全体的に実験的とも言える手法を駆使しながら、肌触りは暖かく深い余韻を残す映画である。
目にしみるカナダの自然の風景の美しさ。シューベルトやモーツァルトなどの室内楽を中心とした音楽もセンスがいい。
ケベック州のモントレンブラントの森で一台のバスがエンストを起こして立ち往生する。乗客は高齢の女性ばかり7人で、黒人の女運転手ミシェルはエンジンの知識が皆無だ。最高齢のコンスタンスは少女時代にこの森にあるコテージで過ごした思い出があり、彼女たちはそのコテージに向かうが、今では廃墟になっていた。仕方なくその廃屋で共同生活を始めることになった8人だが、次第に彼女たちはそれぞれの特技とキャラクターを生かして役割分担をするようになる。
別にドラマティックな出来事があるわけではない。森の中の廃屋での登場人物たちの暮しをカメラは静かに追うだけである。彼女たちの会話、クセや表情から一人一人が歩んで来た人生を浮き彫りにする。最初は見ず知らずだった彼女たちが、次第に連帯感を深め、年をとったことに対する絶望・諦めなどから解放されていく過程がしみじみと感動的に、しかもユーモラスに綴られる。老人を主人公にした映画ではマーク・ライデル監督の「黄昏」(82年)に匹敵する秀作だと思う。
演技していることを全く感じさせない自然体の出演者たちがいい。会話のシーンがいつの間にか登場人物に対するインタビューのような形になり、若い頃の写真がカットバックで挿入される。平凡な老人に見えても決してその人生は平凡ではない。いや、ドラマティックではない人生なんて本当は存在しないのではないか、という作者の主張が伝わってくる。全体的に実験的とも言える手法を駆使しながら、肌触りは暖かく深い余韻を残す映画である。
目にしみるカナダの自然の風景の美しさ。シューベルトやモーツァルトなどの室内楽を中心とした音楽もセンスがいい。