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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「ハンガー」

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 (原題:The Hunger)83年イギリス作品。先日惜しまれつつも世を去ったデイヴィッド・ボウイは、映画にも何本か出演していた。本作はその中でもカルト的な人気を博しており、今観てもその独特の魅力は失われていないと思う。

 何千年も生きてきた女ヴァンパイアのミリアムとその恋人ジョンが、現代のニューヨークにあらわれる。彼らは深夜のディスコで若者を物色し、住み家に誘い込んでは命を奪い、その血をすすっていた。18世紀のイギリスでミリアムに見込まれてヴァンパイアになったジョンだが、不死のはずの彼が老い始めた。



 不安を感じた彼はアンチエイジングを研究する女医サラの元に足を運ぶが、彼女に診察してもらう前に白髪の老人になってしまった。絶望した彼は自ら命を絶つ。一方ミリアムはジョンの後釜にサラを据えようとして、彼女を誘惑する。しかしトムという恋人もいるサラには、ミリアムの誘いに簡単に乗るわけにはいかなかった。

 ジョンを演じるのはボウイだが、ミリアムにはカトリーヌ・ドヌーヴが扮し、サラにはスーザン・サランドン、トムにクリフ・デ・ヤングと、かなりキャスティングは意欲的だ。加えて、主人公達が住むアパートの古風で禍々しい雰囲気、スティーヴン・ゴールドブラットのカメラによる奥行きのある映像と、映画全体に耽美的な雰囲気が漂う。

 監督はこれがデビュー作になったトニー・スコットだが、後年ハリウッドで“職人的な活劇専門の演出家”になることが信じられないほど、高踏的なタッチを狙っている。もしも彼がこの路線を歩んでいたら、評価が変わっていたことだろう。ひょっとたら兄リドリーとは一線を画す映像派の旗手として持て囃されていたかもしれない。

 なお、実際のボウイの晩年はこの映画で描かれていたような老人ではなく、病気で憔悴していたとはいえ、最後まで凛とした二枚目の佇まいを残していたのは、ひとつの救いであったと思う。改めて彼の作品群を聴きたくなってきた。

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