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Channel: 元・副会長のCinema Days
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「クリード チャンプを継ぐ男」

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 (原題:CREED )長年「ロッキー」シリーズに付き合ってきた手練れの映画ファンならば、文句なく評価するであろう快作だ。ただし正直言ってこのシリーズは全て出来が良かったわけではない。オスカーを獲得した第一作こそ幅広い支持を集めたが、その後は無理筋の御膳立てが散見され、パート4に至っては“怪作”扱いだ。しかし、それらを肯定的に受け入れた上で、また新しいストーリーを刻もうとする、その心意気が嬉しい。

 主人公のアドニス・ジョンソンはロッキーのライバルであり盟友であったアポロ・クリードの息子だ。ただ愛人との間に出来た子なので、小さい頃から辛酸を嘗めてきた。やがてアポロの未亡人に引き取られ、何不自由ない暮らしを送れるようになる。長じて大手金融会社に就職して実績を上げるが、ボクシングに対する思いを断ち切れず、仕事と家を放り出して亡き父が戦いを繰り広げたフィラデルフィアにやってくる。彼はロッキー・バルボアに教えを請い、父親を超えるボクサーになるつもりなのだ。

 ボクシングから身を引いていたロッキーは最初はためらうが、アドニスの中にアポロの面影を観た彼は、トレーナーを買って出る。めきめき腕を上げるアドニスだが、その前に英国のチャンピオンが立ちはだかる。

 まず、構成が巧みである点が評価出来る。主人公はアポロの息子だが、正妻の子ではない。その引け目を感じるような生い立ちを克服し、自分の進みたい道を歩もうとするアドニスの物語。そして一線から退き食堂のオヤジとして余生を送る予定だったはずが、かつての盟友を強烈に思い起こさせる若者の出現によって、また戦いの世界へと舞い戻っていくロッキーの物語。その二つが絶妙にシンクロし合い、重層的に映画を盛り上げていく手法には感心した。

 そして“全力を尽くして困難に立ち向かう”という、王道的なドラマツルギーを何の衒いも無く差し出す作者の思いきりの良さが、観る者の大きな共感を呼ぶ。

 また「ロッキー」の第一作に関して公開当時“最下層に暮らす人々の哀歓をうたいあげている点だけで高評価だ。ボクシングの試合は「オマケ」に過ぎない”という評があったように、本作におけるフィラデルフィアの下町の描写も的確だ。恵まれない者達にとって、スポーツのヒーローの存在がどれだけ救いになっていることか。

 ライアン・クーグラーの演出はソツがなく、要所要所をキチンと撮り上げている。アドニスに扮するマイケル・B・ジョーダンは好演。身体能力もさることながら、内面の表現にも長けている。シルヴェスター・スタローンはさすがの存在感で、老骨にムチ打ってフィラデルフィア美術館の階段を上がっていくシーンには胸が熱くなる。進行性難聴を抱えたヒロイン役のテッサ・トンプソンも可愛くて良い。続編が作られるのかどうか分からないが、また主人公達の活躍を観たいのは確かだ。

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