(原題:The Man from U.N.C.L.E. )肩の凝らない娯楽編だと思う。何も考えずにボーッとスクリーンを眺めるにはもってこいのシャシンだ。しかも、元ネタになったTVシリーズと時代背景を変えていないところがポイントが高い。無理に舞台を現代に移した挙げ句にボロを出すよりも、“絵空事”として割り切ろうとしているあたりに、作者の冷静さが垣間見える。
1960年代前半。ナチスの流れを汲む国際犯罪組織が、核兵器とその技術の拡散によって世界を混乱に陥れようとしていた。東西両陣営にとって“共通の敵”が出現したということで、双方は手を組むことになる。その実行部隊として白羽の矢を立てられたのは、CIAの凄腕エージェントのナポレオン・ソロと、KGBに史上最年少で入った超エリートのイリヤ・クリヤキンだ。
当初は互いを鬱陶しく思っていた2人だが、仕事を進めていくうちにチームワークらしきものが醸成されてくる。しかしながら、手掛かりはその陰謀の鍵となる失踪したドイツ人科学者の娘だけであった。ソロとイリヤは彼女を守りながら、科学者本人を探し出さなければならない。核ミサイル発射のタイムリミットが迫る中、果たして2人は世界を救えるのだろうか。往年のTVドラマ「0011ナポレオン・ソロ」の新たなる映画化だ。
やはり主人公達のャラクターは面白い。有能だが稀代の女たらしでチャラけた雰囲気のソロと、真面目で几帳面だが短気なイリヤ。性格は水と油で反目し合ってはいるが、どこかウマが合う部分がある。それぞれの欠点を補い、最強のチームとして機能するようになる過程には違和感はない。
ストーリーは二転三転する凝った作りになっているようだが、それほどの求心力は感じられない。それよりも、いかにも“映像派”のガイ・リッチー監督らしい外連味たっぷりの画面構成が目立っている。レトロ感とカッコ良さが漂うタイトル・バックをはじめ、登場人物達の出で立ちが“現代にも通じるノスタルジー”を絶妙に醸し出している。アクションシーンは大向こうを唸らせるようなものではなく、多分に映像処理過多のスタイリッシュさを前面に出しているが、これがヘンに生々しい雑味を出さずにあっさりしたテイストに仕上げることに貢献している。
ソロに扮するヘンリー・カヴィルは「マン・オブ・スティール」のヒーロー役とは打って変わったライト感覚を見せ、案外これが“地”ではないかと思わせるほどだ。イリヤを演じるアーミー・ハマーも「ローン・レンジャー」ではヒーロー役だったが、ここでは堅物な持ち味をほんの少しズラした妙演を披露している。司令官役のヒュー・グラントは海千山千ぶりを見せつけ、ヒロインに扮したアリシア・ヴィキャンデルはとても可愛い。続編がいくらでも作れそうな仕上がりで、今後の展開に期待したい。