先日、福岡市早良区にある西南学院大学チャペルで開かれたヴァイオリンとピアノの演奏会に行ってきた。ヴァイオリンは札幌交響楽団のコンサートマスターである田島高宏、ピアノは田島ゆみだ。なお、2人は夫婦でもある。曲目はモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ第34番、シューマンの3つのロマンス、イザイのヴァイオリン・ソナタ第3番、そしてフランクのヴァイオリン・ソナタだ。
10月に同じ会場でチェロのリサイタルを聴いたが、あのときはかなり前方に席を陣取ったためか、音が響いてこないのには閉口したものだ。今回はその反省を踏まえて客席の後方に座ってみた。するとこれが功を奏したのか、実に良く音が聴こえる。ホールの性格を見極めるのも音楽鑑賞では重要だということか。
田島高宏の演奏は艶っぽさや美音調を狙ってはいないが、オーソドキシーに徹した堅実なものだ。聴いていて安心感があり、さすがコンサートマスターを担当しているだけのことはある。テクニックも申し分なく、高い技巧を必要とするイザイのソナタも余裕でこなす。田島ゆみのサポートも万全で、息の合ったところを見せる。
フランクのソナタは、すべてのヴァイオリン・ソナタの中では私が一番好きな曲だ。しかしながら実演で一度も聴いたことが無かった。それだけに今回のプログラムは嬉しい。田島高宏の端正なパフォーマンスにより、この曲の旋律美を大いに堪能した。
アンコールとして演奏されたモーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプスまで、短い時間であったが、随分と得をした気分で会場を後にすることが出来た。このホールでの演奏会は入場料がリーズナブルなので、構えずに気楽に行ける。また機会があれば足を運びたい。